2008年8月3日日曜日

にこプリトランス

   そして予告どおり『にこプリトランス』であります。ええと、好きなものはしようがない。好きだから、好きと書きます。こう書くと、なんだかネタみたいだから、あらためまして書きましょう。私は白雪しおんの描く『にこプリトランス』が好きです。寡黙な兄さん、結城騎士のもとにやってきた双子の姉弟。けれど双子には秘密があって、それはふたりがアンドロイドであるということ。こんなとんでもない妹弟が一度にできて、それからの騎士はもう大変、というか、それはそれでなんかとっても楽しそうに暮らしていると思います。双子がやってきたことで、ちょっとずつ変わっていった人間関係。そうした人間関係の妙、あの人やこんな人の思い掛けない表情が垣間見えるといった楽しさ、仲を深めることで気付く楽しさが最高に魅力的な漫画であると思います。特に第3巻では若様のあんなこんながわかって! もう、素晴らしすぎ。楽しすぎ。といったわけで、私はこの漫画が好きなのです。好きで好きでしようがないのです。

若様の素顔。といいますか、面白い、楽しいは若様だけにとどまらず、ええ、3巻の序盤が過ぎたあたりから始まる姉弟シリーズがもう本当に乗りがよく、勢いもあって、面白かったんです。普段は無口でむしろ謎めいているといってもいい久我原このみが、自宅では弟を鈍器で殴っている。いや、でもあの弟は鈍器で殴られるくらいで丁度いいと思うんだ。むしろ姉にああしてしつこくからむことで怒りを買い、殴られることに喜びを見出している、そんなタイプだと思うんだ。そして私は、そんな久我原が大好きです。というか、あの話を読んで、前よりもずっと好きになりました。

久我原自宅編が終われば、次は若様自宅編に突入して、これがまたまた最高で、凶悪といっていいほどに無茶な試練を若様に課すお姉さま。いくらなんでもそりゃひどすぎです、と思いながら、試練に苦しみ悶える若様を見ていると、なんだか心が温かくなります。やっぱり弟はこうでなければ。姉にえらそうに振る舞う弟なんていりません。姉の理不尽に、不条理に耐え、そして姉を決して憎もうとしない、それが弟の姿であります。だから、若様のあの一連の振舞いは、見ていてすごく心に響くものがありました。最高です。若様、あなたは最高です。

若様登場当初のことを思うと、今の若様、騎士の関係の変容っぷりがもう面白くて、いったいなんであれほど騎士は頼りにされるようになったのだろう、疑問に思うくらいですが、けれど連載を読んでいるとその変化というか、近しくなっていく様といいますか、それが不思議とは感じないくらい自然で、双子のせいもあるでしょう、騎士のあの雰囲気のせいもあるでしょう、けれどほんと、仲よくて楽しそうでいいなあと思うんですね。あれほど仲よくなったからこそ、若様は自分のらしさ、それこそみっともないといってもいいくらいの弱みまで見せてくれるのだろうし、また騎士も、自分の思ったところを素直にまっすぐに、それこそ自爆してしまうくらいの勢いでいってしまうんだろうし、本当にいい面々が揃ったものだと思います。

そして、私はこうした面々が楽しそうにやっているところ、和気あいあいとしてにぎやかな様、そこに引かれているのです。個性的な彼らが、その個性を引き出されることによって、表現される世界はこうも豊かに変わる。その漫画世界の温かで心地よい様は、ちょっとめったにあるものではないと思います。正直うらやましいくらい。飛び込めるものなら飛び込んでいきたい、そんな魅力的な世界に私は心の底からとらわれてしまっています。

キャラクターが好きということは確かにあると思いますが、それ以上にその描かれる世界が好きといえるのが、白雪しおんの漫画です。好きなものはしようがない。好きだから、好きと書くほかない。それくらいに好きな漫画です。

  • 白雪しおん『にこプリトランス』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 白雪しおん『にこプリトランス』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 白雪しおん『にこプリトランス』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

引用

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