2007年10月23日火曜日

SF/フェチ・スナッチャー

  このところ、表紙にひかれて買った漫画を連続して取り上げていますが、この表紙買いっていうの、改めて考えると、結構成立する条件が厳しいんです。まず、表紙買いっていうくらいだから、内容に関する知識が事前にあっちゃ駄目なわけで、それに、この作者わりと好きだったんだ、っていうのもちょっと違う。まったく知らないとか、ちょっと知ってるだけとか、それくらいの乏しい知識の中、表紙に引きつけられるままに買ってしまう。やっぱりこうでないといけません。だから表紙買いされる漫画ってのは自然マイナー作に偏りを見せて、だってメジャー作だとどうしても評判とか耳に入ってしまいますから。レビューを読んだ、友達が面白いっていってた、なんだか賞とったらしいよ、などなど、こうなっちゃ表紙買いっていえませんよね。と、こんな具合に条件をどんどん厳しくしていくと、純粋に表紙買いといえるものってほとんどないように思います。ですが、そんな乏しい表紙買い体験の中、これぞといえるものが私にはあるのです。それは、西川魯介の『屈折リーベ』です。

って、『SF/フェチ・スナッチャー』じゃないの? なんて声が聞こえてきそうですが、大丈夫、『屈折リーベ』であってます。

私と『屈折リーベ』の出会いは、かつてJR神足駅前にあった書店で果たされました。今から考えても、不思議な店であったと思います。妙にマニアックな品揃え、特に広い店でもなかったのに、二階の漫画フロアにはこれ!という漫画がやたらとあって、とにかく衝動買いをさせるのですよ。思い起こせば、『しすこれ』買ったのがここでした。『おつきさまのかえりみち』もここでした。だから当然『りんごの唄』買ったのもここだったわけで、この店のおかげで私の視野はずいぶんと広がりました。深みにはまっただけかも知れませんけど。あ、そういえば『こども生物兵器』買ったのもここだわ。いやあ侮れないなあ。ほんと、あの旧店舗には魔法でもかかってたのでしょうか。

『屈折リーベ』はまさしく表紙買いでした。西川魯介という漫画家は名前さえも知らず、だから本当に表紙だけだったのです。ショートヘアの凛々しい女子が眼鏡越しにこちらを見ている。また眼鏡かよ! そうだよ、眼鏡が好きでなにが悪い。こちとら幼稚園に通ってた頃からの眼鏡好き。筋金入りてなもんですよ。だから私は『屈折リーベ』の表紙にあらがうことができず、ふらふらと買ってしまった。この漫画に関しては、以前にも書きました。だから今回は『SF/フェチ・スナッチャー』を取り上げたいと思って、というのも、これ、『屈折リーベ』買った翌日に買ってるんですよね。

『屈折リーベ』と併置されてたんですよ。けどいかな私も、いきなり『SF/フェチ・スナッチャー』買っちゃうほど豪気ではありませんでしたね。レトロSF感、それも多分にパチモン臭さが加味されている、そんな表紙なんです。特撮、それも東宝系のパロディっぽさが匂う表紙、中を見ますとそれ以上に不思議な空気に充ち満ちている。なんせのっけからスクール水着型宇宙人と戦う女子高生ですからね。眼鏡型宇宙人捕り手を相棒に、栗本玻瑠は日夜この地球に潜伏する宇宙人を追うのである! って、真面目に書く内容じゃないよなあって感じ、正直ちょっとあり得ない。

けれどあり得ない設定はまだまだあって、なんと地球人の唾液は異星人たちにとって劇薬であるのだ。だから玻瑠は舐める。下着に、水着に、上履きに身をやつしたホシを駆り出すべく舐めるのだ! レズでフェチの変態という汚名を着せられて、それでもなお玻瑠は戦い続ける。頑張れ栗本玻瑠、負けるな栗本玻瑠。果たして玻瑠の明日はどっちだ!?

もう最高。『屈折リーベ』を皮切りにして、『SF/フェチ・スナッチャー』で深みに落ち込んだ私は、以降、今に至るまで、西川魯介を追い続けています。なんの気なしの衝動買いが、こうまで深刻に影響及ぼすという好例で、いやあ、ほんとこれこそ表紙買いの醍醐味でありますよ。

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