書店店頭に『とめはねっ! — 鈴里高校書道部』を見付けて、ほう、2巻の表紙は少年の方かい。1巻では元気いっぱいに筆を持ち上げた女の子、望月結希がずいぶんすがすがしく思えたものですが、2巻は大江縁を控えめに立たせることで落ち着いた雰囲気醸し出して、そういえばこの二人のキャラクターの対比も面白いなんていってましたっけね。主人公に単純粗雑元気と繊細小心内気の男女をもってきて、その元気の方を女の子にしてしまうあたりはかなりいい感じであると思います。今は女の子も元気で粗雑で直情径行で、そしてそれがいいと思えるのですから、昔とはずいぶん変わりました。自由で闊達なふうが、内省的な少年にむしろマッチして、いいコンビだなあと思わせて、そのどちらをも引き立てるようです。
さて、この漫画は、基本的に鈴里高校と鵠沼学園の書道部が対決しながら、互いに刺戟となって、高めあうというような、そういうパターンでいくみたいですね。書道に関しては名門といえる鵠沼、方や弱小の鈴里。両校の部長が双子の姉妹というのはちょっとやりすぎという気もしますが、けれどこういうコントラストを出して、わかりやすさ、けれん味で面白さを引き立てようというのはよくわかります。メインの鈴里は穏やか丁寧可憐な部長に、乱暴者が二人、そして主人公二人がメンバー。対して鵠沼はライバル意識剥き出しの過激な部長、そして美少年が表に立って、あとはモブ。思い切った整理ですが、この割り切りも含めてわかりやすさなんでしょう。あまり多すぎない人数、わかりやすい構図で、書という一見地味な芸術にひそむ面白さ、ダイナミズムを表現していこうというのだと思います。
そして、そのダイナミズム、面白さは少しずつですが伝わってきて、やっぱり書はやってみると面白かったなと思い出すんですね。以前にも少しいいましたが、私は数年にわたり字を書いてきて、けれど習いにいけなくなって、今は書いていないんですね。けどこの漫画見たら書きたいなあっていう思いが出てきて、これはやっぱり漫画に書の面白さが感じ取れるからだと思うんです。けれど、書という営為についていうなら、2巻よりも1巻だったなとは思います。2巻は漫画としての面白さが前に出てきてると思う。だから、読んで面白かったけれど、ちょっと物足りない感じ。この物足りなさが、3巻で解消されるものと期待していますが、実際2巻は3巻で描かれる合宿に向けての橋渡しという印象が強くて、だから3巻。3巻にこそ書の面白さ、一人ただ紙に向かい字を書くということの面白さが描かれたらいいなって思っています。
ああ、それとこの漫画の重大な要素、恋愛ものとしての線ですが、鵠沼の美少年、ちょっと好かんね。だから私は主人公ユカリを応援したいと思います。というか、彼がががっと強く自分の字をものするその時が楽しみなのですよ。いつかくるだろうその瞬間のためにこの漫画を追いたいと思っている、そういっても過言ではないと思っています。
- 河合克敏『とめはねっ! — 鈴里高校書道部』第1巻 (ヤングサンデーコミックス) 東京:小学館,2007年。
- 河合克敏『とめはねっ! — 鈴里高校書道部』第2巻 (ヤングサンデーコミックス) 東京:小学館,2007年。
- 以下続刊
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