2007年10月27日土曜日

とらぶるクリック!!

  ああもう、可愛い、可愛い、面白いってことで、もうどうしようもないんですが、なにが可愛いのかといいますと、『とらぶるクリック!!』ですよ。以前、私はこんなこといっていました。『とらぶるクリック!!』は最初どうにも馴染みづらかった — 。けど後にこの漫画の面白さに目覚めて、遅ればせながらコミックス購入して、しかし、わたくしのばかばかばか、どうして1巻の出た当時、買おうかどうか迷いながら見送ったのか。なんてことがどうも悔いになっているようで、反動ですか? なんですか? 今ではむやみやたらと好きになってしまっているのであります。

さて、私がこの漫画の面白さに気付きはじめた頃、いや素直になれたといったほうがきっと正しい、それはいつだったのかといいますと、第2巻に収録されたなつメロ登場のあたりなのですね。また眼鏡かよって、いやいや、今回はさすがにそうじゃない。いや、ごめん、やっぱりそうなのかも知れない。正直、自分でもちょっとよくわからない……。でも、そうじゃないんだって信じたい。

なつメロ、榎本棗、漫研を飛び出てPC部に流れてきた女。眼鏡、引っ詰め髪、ちょっとツンデレ風の、どうにも素直になれない不器用な女の子なのですが、一見地味でいかにもサブキャラな彼女の果たした役割は大きかった、私にはそんな風に思われるのです。彼女は、一種固定化していたPC部一年三人組に割り込んで、その関係を壊すことなく、おのおのの持つ魅力、個性を際立たせました。とりわけ面白かったのが、さわった機械を壊してしまう琴吹杏珠、ヒロインですが、彼女との関係です。あまりに不器用な棗に対して、空気読めないといっても言い過ぎでない杏珠がぐいぐいと踏み込んでいって、そこに生じる軋轢、すれ違い、けどそれよりも杏珠の素直さに振り回される棗ですよ。そこが極め付けによかったなあと思うんです。

ほら、私も実はそうなんですが、シャイというかなんというか、自分の思うところをはっきりといえない、それどころかまったく逆のことをいってしまうような人ってあるでしょう。本当は混ざりたいのに、声かけて欲しかったくせに、いざ声かけられたらいらないっていってしまう、そういう人です。そこをもう一声、さらに二声あって、仕方ないなあ、そうまでいうんだったら入ってあげてもいい……、となるはずだったのに、杏珠ってやつは空気読めないから、じゃあ仕方ないね、残念って退きやがるんです。ああ、おい、ちょっと待ってくれ、もう少し押してくれたらうんっていったのに……。そうしたやり取りが無闇に可愛らしく、それに杏珠は空気読めないから、ちょっと距離を置き気味の棗をぐいぐい引っ張っていって、部員でもないのに、まだ知りあってちょっとしか経ってないっていうのに、なつメロなんてひどいあだな付けてですよ、それじゃまるで昔からの友人みたいじゃないですか。私はこの一連の杏珠を見て、空気読めない人もこの地上には必要なんだって思いました。天真爛漫で、素直で、ちょっと馬鹿っぽいところもないではないんだけど、この漫画の持つ和気あいあいとした親密さの中心には、杏珠の空気があるんだなあとそんな気がしたんです。実際、こんな子、身近にいたら騒がしいし難儀かもなあって思うけれども、けれどこういう子がいることで成立する空間もあるんだなって、そしてそれはきっとすごく優しい空間なんじゃないかなって、そんな風に思ったんです。

そして、この優しい空間の中で、一年生諸嬢は自分らしさというか、お互いのよさも悪さも出し合って、とんがりながら、助け合いながら、みんな対等な感じでつきあっていて、多分私はそうした雰囲気にほだされたのですね。自然体でいられる関係 — 、人見知りだったり、人間関係に不器用だったり、空気読めない甘えん坊だったりしても、仲間内では素直になれる。すごく居心地のいい、けれど決して閉じられたりしていない、そんな関係が素敵で、見ていてなんだかいいなあって思ったんです。

だから私も、杏珠の天真爛漫さに引っ張られるままに素直になれた口なのかも知れません。優しくて、楽しくて、暖かな雰囲気を感じさせてくれる空間に、知らず引き込まれていたのですね。そしてそれは、私にとって、すごく喜ばしいことであったのでした。

蛇足

なつメロはべらぼうに可愛いのだけれども、それでもやっぱり柚が好き。

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