2005年12月17日土曜日

海底二万海里

   今ではちっともSFを読まなくなってしまった私ですが、子供のころはファンタジーやSFは好きで、ジュール・ヴェルヌなんかは最高にお気に入りの作家でした。彼の作品はSF古典中の古典で、そもそもその当時にはSFなんて言葉はあったのかどうか。いずれにせよ、当時の科学知識と未知への好奇心を持って書かれた作品はどれも躍動感にあふれていて、翻案ものの数々を見ても、その人気のほどはうかがえるのではないかと思います。

で、私の好きなヴェルヌものはなにかというと、『海底二万海里』が『十五少年漂流記』にぎりぎり拮抗しています。どちらも子供のころ、何度も何度も読みました。本当に好きで、何度も読んだものでした。

『海底二万海里』は、その主人公が少年ではなく博物館の教授であるというところからして、子供心になにか異質な風合いを感じながら読んだものでした。

次々と発生する海難事故、その原因を調査するその先には、衝角を持った潜水艦ノーチラス号があった。謎の潜水艦に謎のネモ船長。彼らの潜水艦に図らずも乗艦することになったアロナックス教授とその一行は、まだ誰も見たことのない海の神秘を目の当たりにすることとなるのです!

ああ、もうロマンですよ。『海底二万海里』はSFはSFですが、どちらかといえば海洋ロマンのほうが強く、私は海底の散歩や海の生き物との戦闘、そして神秘的な墓所の描写をわくわくとしながら読んだのです。深く青緑に沈んだ海底はあくまでも静かで神秘で、あのドキドキとした胸の高鳴りは、おそらく十九世紀の読者に変わらぬものであったのではないかと思っています。

私はこれを図書館で読み、人に借りて読み、そして表紙のとれた分厚いもらい物の大本で読み、そのそれぞれに違いや特色はあったはずですが、それよりもヴェルヌの描いた世界の濃密さに心捕らわれて、いや、素敵な時間でした。気付けば日も沈んで薄暗くなった部屋。私の子供時代の読書は、まるで一日中を本の世界に遊んで、それは豊かで贅沢でした。

  • ベルヌ,ジュール『海底2万マイル』加藤まさし訳,高田勲絵 (講談社青い鳥文庫) 東京:講談社,2000年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』荒川浩充訳 (創元SF文庫) 東京:東京創元社,2000年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万マイル』南本史訳 (ポプラ社文庫) 東京:ポプラ社,1989年。
  • ベルヌ『海底二万マイル』南本史訳 (ポプラポケット文庫) 東京:ポプラ社,2005年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』江口清訳 (集英社文庫 — ジュール・ヴェルヌ・コレクション) 東京:集英社,1993年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』上 大友徳明訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1999年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』中 大友徳明訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1999年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』下 大友徳明訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1999年。
  • ヴェルヌ『海底二万海里』花輪莞爾訳 (角川文庫クラシックス) 東京:角川書店,1963年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』上 石川湧訳 (岩波少年文庫) 東京:岩波書店,1991年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』下 石川湧訳 (岩波少年文庫) 東京:岩波書店,1991年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万里』榊原晃三訳 (春陽堂くれよん文庫) 東京:春陽堂書店,1989年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底二万海里』清水正和,A・ド・ヌヴィル訳 (福音館古典童話シリーズ) 東京:福音館書店,1972年。
  • ヴェルヌ,ジュール『海底2万マイル』木下友子,下田正美訳 (どきどきミステリーランド) 東京:金の星社,1991年。

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