私の知人に柊あおいが好きな男がいて、その人はというと、新書サイズで持っているものでも文庫が出れば買うという、そういうちょっと尋常でないファンなんです。で、私はというと、田渕由美子がそれはそれは好きだから、新書サイズでも持ってるし全作品集でも持っているし、けど文庫が出ればやはり買うと、そういうちょっと尋常でないファンです。
今日、病み上がりの帰宅の途上、書店によったらりぼんおとめチックメモリアル選なんて触れ込みで田渕由美子やら太刀掛秀子、陸奥A子の文庫が出ていて、こりゃ私への挑戦か? 危うく全部買ってしまうところをぐっと我慢して、収録作品全部うちに揃っている田渕由美子の『林檎ものがたり』だけを手に取ったと、そういうことがあったのです。
田渕由美子はいいですよ。私は、残念ながら、少年だった時分に田渕由美子に触れる機会がなかったものだから、ずいぶん後になって、レディースコミックで出会って、それがもう運命の出会いと、過去へ過去へとさかのぼっていったのでした。
私は、そもそも生まれが遅かったので、おとめチックという時代を共有することはかなわなかったのですが、時代も平成、二十一世紀を目前とした時期に急いで当時を懐古して、いじらしかったりあるいはクールだったりするヒロインと、彼女を取り巻く当時風の恋愛模様になんかくらくらきましてね、ああ駄目だ、この雰囲気にはあらがえないわ。もう、大好きなのです。
文庫には田渕由美子による後書きがあって、笹塚の下宿屋のことが書いてあって、ぐいぐいと読ませるいい文章でした。田渕由美子は漫画だけでなく文章もいいなあと、本当にいいと思いましたよ。
語る力がある、その力が漫画にも文章にもともによく現れている、そういうことなのかと思います。
- 田渕由美子『林檎ものがたり — りぼんおとめチックメモリアル選』(集英社文庫) 東京:集英社,2005年。
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