2005年7月4日月曜日

花の湯へようこそ

 私の四コマの好みはどうも微妙なラインに寄っているようで、単行本が出たり出なかったりするような、そういうところに位置する漫画が好きで困ります。そうした位置を占める漫画というのは、ネタにせよ見せ方にせよ穏当なものが多くて、私はそういう穏当さを求めているところがあるから非常に合うのですが、穏当ということはパンチにかける、あるいは地味ということにもつながって、面白いのにもったいないと思うことはよくあります。

渡辺志保梨もそういう微妙なラインなんじゃないかと思っていたので、『花の湯へようこそ』が単行本化すると知ったときには、嬉しかったです。

渡辺志保梨はまんがタイム系列誌では連載を三本持っていて、『花の湯へようこそ』、『ごちゃまぜMY Sister』、『大人ですよ?』とあったのですが、この中で一番私が好きだった『大人ですよ?』は『ごちゃまぜMY Sister』に押し出されるかたちで連載終了してしまって、これは私に好かれた漫画は早々終了するジンクスのためなのか!? でも『ごちゃまぜMY Sister』も決して嫌いじゃないから、どれを選べといわれても困ります。だから、どれもを読めた時代というのは仕合せであったなあなどと、昔を懐かしむのでありました。

『花の湯へようこそ』は、『まんがタイムナチュラル』に連載されていた漫画で、ナチュラルがなくなったときに、雑誌ごと消えてしまうのではないかと危ぶまれたのを思い出します。基本的にシンプルな四コマが連続する、ある種昔気質の四コマ漫画なんですが、すっかりレギュラー化している銭湯花の湯の常連たちは、おなじみさんの醸し出す親しみやすさなんてのを読者にも感じさせてくれて、こういうところが人好きのする理由になっているんじゃないかなと思います。

ほの暖かい感じが微温的ギャグとあわさることで、ほっとできるリラクゼーション空間を、— なんていったらうまいこといいすぎですが、実際、渡辺志保梨の漫画のよさというのは、この穏やかなところ、落ち着けるゆったりとした流れの心地よさにあると思っています。

ところで、『花の湯』は銭湯を舞台とした漫画だから、それこそ女湯も出てくるんですが、渡辺志保梨の絵にはいやらしさとかがみじんもなくて、そういう穏健なところもいいですね。

これは、もう渡辺志保梨の持ち芸というほかないでしょう。ちょっとまねして出せるような雰囲気ではないと思います。

  • 渡辺志保梨『花の湯へようこそ』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 以下続刊

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