2005年7月16日土曜日

ARIEL

  そんなわけで『ARIEL』。って、単純やな!

『ARIEL』といったら、私が高校の図書室に通っていたときに、好きで借りだして読んでいたシリーズで、巨大女性型ロボットを駆り地球侵略をたくらむ悪い宇宙人と戦う美人三姉妹(一番上は従姉なんすけどね)という、実にマニア心をくすぐる設定が魅力のノベルです。なにが面白かったといえば、序盤に見られたハイテンション・スラップスティック系ギャグやパロディなんかもそうですし、中盤から後期にかけての微妙にシリアス展開もよかった。けどなにが一番いいといっても、敵方の宇宙人も含めた魅力的なキャラクターでしょう。侵略する側される側が、それぞれの事情思惑でもって慣れあったり、けどやるときはやってみたりという、そういうメリハリのあるどたばた展開が面白かったなあと思います。

私が高校の頃に読んだのは、多分第7巻までですね。宇宙海賊パスク・ダ・ルーマーとか、覚えてますからね。でも、この頃で好きだった話というと、第5巻収録の修学旅行編。だって、舞台が京都ですよ。嵐山渡月橋付近に降下兵が降りる場面なんかは、なにしろ嵐山にはうちの墓がありますから、庭みたいなもんですよ。道路沿いの商店の並び、松の枝ぶりまで目の前に浮かぶかのようで、すごい臨場感。めっちゃくちゃ面白かったですね。それに倒錯美少年ニコラスとの会見のシーンもよかった(シモーヌが可愛いんだ)。目茶苦茶お気に入りの話でした。

あとお気に入りといえば、第6巻のシモーヌ結婚編もよかったなあ。この話、地球をはるか離れたところで展開されるもんだから、全然ARIELとか出てこないんですが、こういう宇宙人側のいろいろがすごく楽しいのですよ。艦長がシモーヌをさらいに(?)単騎乗り込む場面の描写などは、まさに逸品。もう大興奮でしたよ。

とまあ、こんなふうに『ARIEL』は各巻ごとに見せ場があって、それがすごく面白くて、一級のエンタテイメントでありますよ。でもただ楽しいばかりではなくて、後に出てくる原爆を積んだボックス・カーが現代に迷い込む話みたいにちょっとシリアスなのもあって、特にタイムトラベラー、ユリのからむ話はなんだかしんみりさせるものが多かったような覚えがあります。うん、あのへんの話も好きですよ。

ほかにも見どころはいっぱいあります。クレスト・セイバーハーゲンの強烈なインパクトにも酔いましたし、宇宙怪物(古代兵器でしたっけ?)との電子戦にも燃えたっけなあ。ともあれ、どの巻にも燃える展開があって、私は大学卒業してから『ARIEL』を買いそろえたのですが、司書の資格を取りに通う道々で読んだ『ARIEL』の懐かしいこと。いや、懐かしんではおられないですね。なんといっても番外編が出ているようですから、また買ってこないといけません。

『ARIEL』の旬は、間違いなく平成が一桁台の時分で、だから今のアニメファン、漫画ファンからすると、ちょっとなじみにくいところはあるかも知れません。ですがこのちょっと古い感じもしないでもない『ARIEL』が星雲賞に輝いたというのは、やっぱり私みたいな、長い間この作品に触れてきて、当時の友人やら過ごしてきた季節やら、思い出にまみれてなんだか言葉にできないような感慨にとらわれるやからが多かったからなんじゃないかと思ったりします。

思えば長いですもんね。二十年弱に渡って展開されてきて、いや、本当に長い間お疲れさまでした。

蛇足

また一巻から読み返してみよっかなあ。

  • 笹本祐一『ARIEL』第1巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1987年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第2巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1987年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第3巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1988年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第4巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1989年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第5巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1989年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第6巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1990年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第7巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1991年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第8巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1993年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第9巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1995年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第10巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1996年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第11巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1996年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第12巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1997年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第13巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1998年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第14巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,1999年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第15巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,2000年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第16巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,2001年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第17巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,2001年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第18巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,2002年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第19巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,2003年。
  • 笹本祐一『ARIEL』第20巻 (ソノラマ文庫) 東京:朝日ソノラマ,2004年。
  • ARIEL読本』東京:朝日ソノラマ,2004年。
  • 笹本祐一『侵略会社の新戦艦』(ソノラマ文庫;ARIEL番外編第1巻) 東京:朝日ソノラマ,2005年。

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