今日、仕事帰りに書店によったら『ホームメイド』の二巻が出ていて、もちろん買いました。『ホームメイド』の作者谷川史子は、私の好きな漫画家の最上位級に常に位置していて、私はこの人に魂を捧げても悔いないと、そういいきれるくらいに好きな漫画家です。
で、家に帰って、メールを出しました。私の、昔の職場の人で、大学の先輩で、たしか『愛はどうだ』だったと思うんですが、二冊買っちゃいましてね、一冊目がちょっと傷んでたんですよ。だから買い直し。私には、小さなことには頓着しない時期と、ささいなことにも一喜一憂する時期がそれぞれ別個にあって、ちょうどその頃ナーバスな時期だったんですね。だから、裏表紙についた傷に我慢できず、二冊目を買って、その最初の一冊を件の人にあげたのでした。そうしたら、もうドンピシャというか、その人も谷川ファンにならはりまして、ええ、それ以後、新刊が出るたびにその人にメールで知らせているのです。
私が谷川史子を発見したのは、ちょうどりぼん本誌で『くじら日和』が連載されているのを見たのがきっかけで、私はその頃ちょっとわけあってりぼんを購読していたのでした。りぼんは少女漫画なので、やっぱり甘くきらきらした、いかにも少女漫画ですという絵柄にあふれていて、けれどそんな中に異彩を放っていたのは谷川史子でありました。
悪くいえば地味なのかも知れません。お話もあまり派手さはなく、きっちりと少しずつ進めていくタイプ。当時のはやりだった、魔法とか変身とかプリンセスとかそういうとっぴな設定もない、本当に身近な世界をていねいに描いていくという、そういう堅実さが感じられて、私はこの人はいいなと思いました。
けど、その頃はそこまで。私が『くじら日和』を単行本として買ったのは平成10年。大学院の二回生の頃。その頃私はなんだか空しさがいっぱいで、なんか悲しくって、そうした苦しさをなんとか埋めたいと思って、その時に読んだのが谷川史子をはじめとする少女漫画であったのです。いろいろ買って、読んで、そしてやはり谷川史子はよいと、論文に向けて心をやせ細らせる一年を、こうした漫画に支えられて越しました。
谷川史子のよさは、朗らかであること — 。ほのぼのとした明るさがあって、そしてその向こうにセンチメンタルにゆれる心があるところ。谷川のヒロインは、みんなすごくけなげだと思う。思いが受け入れられないつらさを見つめ、苦さを噛みしめ、時には迷いにぶれながらでも、けれどまっすぐに自分の望む未来に手を伸ばそうとする。そうしたヒロインは本当にりりしくて、決して折れないしなやかさなこころの持ち主だと思います。こんなふうに私は『くじら日和』のヒロイン勇魚に理想を見て、なんと気持ちがいいんだろうと思って、そうして谷川史子ごと好きになったのです。
谷川史子の絵に表れる笑顔は、とってもいい笑顔で、ちょっと他にないあたたかでやわらかな気持ちがあふれています。どんなに泣いても、苦しんでも、最後にそうした笑顔があるから、私は谷川の漫画にひかれるのだと思います。
蛇足
今日買った『ホームメイド』第2巻。なんと、表紙にかすかな傷がいっていて、大ショック。書店では気付かなかったんですね。指で触れてもわからないような傷で、真っ正面から見てもわからないような傷で、けど光にかざすと見えるんですよね。
ううう、ヒロインの、日和子の顔にななめにいってるというのが耐えられないような気がします。二冊目を買って、また谷川ファンを増やせというご神託なのでしょうか、これは!
- 谷川史子『くじら日和』(りぼんマスコットコミックス) 東京:集英社,1993年。
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