七月も中旬から下旬に向かおうとする今日、京都では祇園祭のハイライトともいえる山鉾巡行がおこなわれました。私は学生の頃には、毎年のように祇園祭にいっていたのですが、この数年はまったくといっていいほどいっていません。今年も、テレビで中継を見るだけですませてしまいました。
祇園祭、祇園祭といえば忘れられない印象があります。子供の頃に家族総出で見に行った映画『南極物語』に祇園祭の京都が出てきて、私は幼稚園児の頃から祇園祭が、あの鉾というのがもう本当に好きでしたから、このシーンがすごく印象的で鮮やかで、大人たちが難しい話をしているという以上に理解できなかったこのシーンを、はっきりと胸に刻みつけるほどに鮮烈にとらえたのでした。そんなせいか、今となっても祇園祭の季節になれば、南極の冬を越えた二頭の犬のことを思い出します。
私がタロとジロのことを知ったのは、いったいいつごろのことでしょうか。私の育った七八十年代には、南極に泣く泣く置き去りにされた十五頭の犬のことを扱うメディアは多かったように思います。それは特に子供向けの本雑誌において顕著で、例えばそれは学研の科学であるとか、そういった雑誌だったのかも知れません。珍しくはっきりと覚えているのでは、学研のひみつシリーズ『犬のひみつ』でしょう。ですが、この本は従姉の持ち物でした。だから、今は残っていないのではないかと思います。
さて、タロとジロの物語は、当時の子供ならまず知っているといっていいほどに有名な物語でしたから、映画になったというときに見に行こうということになったのも当たり前のような話でした。製作がフジテレビ、学習研究社、蔵原プロであったことから考えても、テレビでのプロモーションもあれば、学研の学習雑誌でのプロモーションも盛んだったことでしょう。おぼろげな記憶を探れば、私は南極に置き去りにされた犬たちの名前や性格を熟知していたような覚えがあります。それが果たしてメディアのためなのか、あるいは映画館で買ってきたパンフレットのためなのか、そこまでは定かではありませんが、少なくとも私はあの犬たちと、犬たちの立ち向かった運命に、大きく心を動かされていたのです。
この映画で素晴らしかったのは音楽もそうで、多分テレビからだと思うのですが、『E. T.』や『フラッシュダンス』といった映画音楽を録音したカセットテープというのが手もとに残っていまして、今やカセットデッキも壊れてしまっているので聴くことはかなわないのですが、ですがこれらの音楽は本当に宝物のように思って聴いていました。そして、この中に『南極物語』のテーマ曲もあったのですね。
私が子供の頃は、今みたいに簡単にDVDやビデオで、好きな映画を好きなときに見るということがかなわない時代でしたから、こうしてテーマ曲を聴いて、パンフレットを読んで、好きだった映画の追想をするというのが普通でした。そうして私はいったい何度南極の過酷な自然に立ち向かった犬たちの物語を追想したことでしょう。それはあたかも、自分がその場に立ちあったかのような思いで振り返ったのだと思います。
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