ミュージカル・バトン企画最終夜。問四「よく聞く、または特別な思い入れのある5曲」の五曲目は、台湾の歌手、順子(Shunza)の歌う『寫一首歌 (April 5, 1969)』。ギターがアルペジオにて奏でるイントロに、しなだれかかるようにかぶさってくる順子の歌声。極めて美しく官能的で、けれど順子の魅力はこれだけではありません。わずかにハスキーがかった声はまるで身に触れてくるかと思わせるほど存在感にあふれ、けれどエッジの立った歌声の小気味いい粒立ちも気持ちがよい。はつらつとしていた声はまるで若草のように伸びやかで、そこになまめかしい声の魔力が燐光を発して、— 私はあらがえませんでした。そもそも中国語というのは言葉そのものが音楽的であり、そこに順子の歌唱が加われば、なんぞ抵抗などできるものではないのです。
私がこの歌を知ったのは、1999年のNHK中国語会話の一コーナーであった「中国大茶館 我愛中国音楽」にて紹介されたのをきっかけにしてでした。今やはっきりとは覚えていませんが、街を歩く順子にオーバーラップして表示される、ギターのコードダイアグラムが印象的で、私はその頃にはまだギターは弾いていなかったのですが、この曲が私にギターをはじめさせたのは間違いなく事実です。私は、いずれこの曲を弾きたいと思っていて、美しい漢語の響きはメロディを超えてなお音楽的で、私は私の言葉にはないまた違う音楽の美しさを、中国語に感じて身震いをするかのごとくであったのです。
私には王菲も印象的でしたが、順子にはとにかくやられて、この年の近辺はもう中国にめろめろでした。中国はよいです。可能性にあふれています。そしてそれは音楽にこそ、と私は思っていて、今、私はその可能性はすべての言語に等しくあると思っていますが、ですがやはり音楽における中国語の魅力は一種魔力を秘めていると感じられてしかたがありません。その魔力にはもうあらがいがたく、順子は、順子はやはり最高であるといわずにはおられません。
ところで、『寫一首歌』のPVを収録したVHSが昔出ていて、私はこれをHMVで発見して、きっとNHKで取り上げられたものに違いないと思い注文、到着を心待ちにしていたのでした。けれど、待てど暮せどビデオは届かず、そしてついに届いたメールには! 絶版につき入手不可能との悲しい文言が記されていたのでした。
DVDで復刻してくれないかなあ。絶対買うんだけどなあ。本当にあれは、素晴らしい映像だったんですから。
0 件のコメント:
コメントを投稿