2019年3月24日日曜日

『まんがタイムきららフォワード』2019年5月号

 『まんがタイムきららフォワード』2019年5月号、発売されています。表紙は『球詠』。投げる詠深、受ける珠姫。その表情はリラックスして、ああ、本編はあんなにも死闘そのものといった様相なのに! いや、本編でも詠深、いい表情見せてくれていますよ。と、その前にこの表紙、のびのびとして、楽しそう。球春到来! とのこと。ああ、テレビでは連日高校野球が放送されて、プロ野球もそろそろ開幕。そんな頃に、熱い勝負見せてくれているのが『球詠』です。

今回、新規ゲストは3本です。

『きつねとたぬきのばかしあい』。たまたま名前が田抜だったたぬきさんがルームシェア相手を募集してみたらば、やってきたのがきつねの鼓音さん。見た目ちんまり、小さな女の子なんだけど、必要とあらば大人の女性にも化けられる。化けられる? なんか失敗していますよ? 主人公、田抜氏がルームシェア相手を募集したの、婚約者に逃げられたからなのか。しかしまた、引っ越し直後に当然別れを切り出されるとはエキセントリックな。そう思ったのだけど、この相手が後々きちんと物語に関与してくるところ。そして、それが鼓音の心情、優しさを物語ることになるというところ、よかったなあって、よくチョイスされた展開だったんだなあって、すっかりほだされるようにして読んでしまったのでした。コミカルで愛らしい掌編です。たった30ページで、けれどページ数以上に豊かと感じさせるものがあって、この雰囲気も、語り口も、とてもとてもチャーミングで素晴しかったと思います。

『おさるのモンチー!』。なんだろう、面白かったです。人語をあやつるおさるのモンチー。人間に復讐するっていってますが、やたらモラルが高くて面白い。主人公、森野林檎が店番する青果店のバナナ食べたのとがめられて、逮捕されるよ、一生牢獄だよって、それでビビって、食べた分を働いて返すってね、これだけでもう面白い。なんて真面目なおさるだろう。この漫画見て面白いと思うの、表現されてることが、もう見事に素直だからなんじゃないかなあ。お話もストレート、キャラクターの描かれようもストレートと感じられて、妙に愛嬌あるんですよね。復讐だなんていってるモンチーが、林檎の家に住むうちに、人の暮らしにめちゃくちゃ馴染んでしまうのも、素直な展開ながら、その描かれてるモンチーが楽しいの。絵柄もあるのかな、タッチもあるのかな。けど、多分それだけじゃなくて、やっぱり愛嬌なのかなあ。ただキャラクターが可愛いだけじゃなく、絵柄やお話からも愛嬌が感じられて、ついついつりこまれるみたいにして笑ってしまう、ほほえましい。そんな味わい、悪くなかったです。

『&ール』。四コマです。2話連続とのこと。今回は、まずは登場人物の顔見せなのかな? と思ったら、とりあえずメインの子がヤバいっぽい。瑞音さん。ドール、人形が好きで、ゴミ捨て場でドール見つけて、救出しているところを、ストーキング中、個人情報漁ってるところだと勘違いされた。この通じない会話がこの漫画の核なんでしょうね。見てしまった子、アビ子も、瑞音にいろいろ誤解? 拒絶されて、そんなふたりの教室での会話。それがまたいろいろやりとりおかしいんですね。友人のランもまじえつつ、なんとか会話に持ち込んで、アビ子、人形のふりしてみれば、それはそれでなんだか気にいってもらえたみたい。今回は、この気にいってもらうところまで。じゃあ、気にいられたらどんな対応になるんだろう。やっぱりドール遊びになるのか。あるいはアビ子がドール扱いになるのか。先はまるで見えない、予測不能感ある漫画ですよ。

『球詠』。梁幽館戦、決着しましたね。冒頭、梁幽館サイドの心情描かれたところ、あれ、キツかったですよ。どれほどの練習を重ねてきたか。つらさ、苦しさの中、やっと勝ち取ったレギュラーの座。その道のりの険しさを知っているからこそ、ここで終わるわけにはいかない。なんとしても勝ち進んで、本戦へと進みたい。ああ、この相手方への感情移入、ほんとつらいものありますよ。可能なら、この子たちの苦労も報われてほしい。やっとの思いでレギュラー勝ち取ったという高代が、意地の二塁打、本命の中田に繋げた、逆転の可能性が見えた。二塁へと進む高代、涙さえ浮かべているんですよ。けれど、新越谷だって負けるわけにはいかない。マウンドでの、詠深と珠姫の対話。中田と勝負すると決めた。ふたりのコソコソ話。強直球で勝負をかけるという、そのやりとり、なにか色めいて、ふたりの関係、その近さなど思わせるいい場面でした。いい場面はまだあって、チームの皆が詠深に声をかける。それこそ外野の、通すぎて聞き取れないようなところからも! それら思いを受けて笑みを見せる詠深。よかったなあ。そして勝負。もう、一コマ一コマを惜しむみたいにして読みましたよ。詠深の投球、渾身の強直球の行方は? 珠姫のミットに収まったのか? いや、ボールは空中へと運ばれて、どこまで? どこまで伸びるのか……!? あの、一塁へ向けて走る中田の読めない表情。ああ、あれは、祈る思いがあったのだろう。スタンドまで運べなかった。このフライを捕球されたら負けが確定する……。かくしてなった新越谷の勝利。ああ、これもまた渾身であります。

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