『まんがタイムきららMAX』2013年8月号、発売されました。表紙は『きんいろモザイク』、木陰にたたずむしのに駆け寄るアリスがかわいくて、いいですね、このミニマムぎみのふたり。しのの、黙ってるとすごく落ち着いてしっとりと可愛らしい、そうしたところ、そしてアリスの元気な笑顔、ぱっと輝く、そのまぶしさがたまらない。背景の、真っ白に飛んでしまっている陽の光、それを背負って負けないアリスでありますよ。しかし大変に美しい表紙、美しいふたり。素晴しいです。
今日は初登場ゲストをとりあげますよ。
『水瀬まりんの航海日誌』、航海ものなんですね。地球とは違う世界、陸よりもずっと海の多い星、海球 — アクアスにて繰り広げられるまりんの海洋冒険譚。異世界もの、ちょっとファンタジー、けれど船に関することはほぼ我々の世界の常識に同じであるようですね。なんといってもカレーが主食(すみません、いいすぎました)。日本の海軍でもカレーが食べられていて、海上自衛隊にもその伝統は続いてるっていいますね。まりんの迷い込んだ世界においてもカレーは船乗りの常食である、ということで、乗艦陽炎でも独自のレシピがあるのだそうです。乙カレー! 艦船の描写がいいですよね。近代艦あり帆船あり、船の種類も時代を超えて多様に存在している模様。まりんが乗り込んでいる陽炎は戦艦、というには小さいか。とりあえず戦争しているような様子はないのですが、カレースパイスを採集しに降りた島にて遭遇した恐竜? ドラゴン? そいつらを威嚇すべく砲撃加えるところなどは、ううん、かっこいい。見せ場もしっかり作って、ええ、面白かったですよ。まりんが自分の世界に帰れるまで、陽炎乗員とともに旅するわけですね。友情? 恋愛? そうしたところも含めて、しっかり見せてくれた、そんな第1回でした。
『ナースegg!』、ナースの卵、看護学校の生徒神居と成香の物語。っていうか、いきなり憧れのナースキャップを否定される展開、あれは面白かった。わりとしっかりした看護学生ものなのかな? そう思ったら、しっかりとゆるいの半々って感じですね。授業はいきなり止血鉗子の紹介から。ふざけて先生に怒られて、こうしたものを基本としている、そんな感じがしますね。看護学生の学ぶ内容として介護が出てくるとか、起こして、清拭してなど、また清拭でよくある? 失敗事例みたいのが描かれて、これは作者がなんらかの知識とか体験とかあるってことなのかな。なんかね、想像だけで描きました、みたいな感じがしない。不思議とリアリティがあったんですね。そして最後には採血の練習まできて、いやはや、すごい駆け足、そんな感じ。もっとひとつ学ぶことのテーマに区切って、器具なら器具、介護なら介護みたいに、ふくらませていったらよかったのに。そうしたら、読みごたえも出るだろうし、次から次に手持ちのネタを打って消費してといった感じもなくなりそうに思いました。というか、一気に手持ちを使いはたしたりしたらもったいない、そう思わせる感触があったんですね。
『春日さんとメイドくん』は学生ものですね。深層の令嬢、春日ひなのは、あまりにもお嬢様なので押しボタン式信号も知らない。そんなで、よく鉄道が使えたな! ともあれ、たまたま通り掛かった森下豊、主人公に助けられて、無事学生寮に到着。そうしたら寮の管理人やってる親戚のお姉さん、森下聖子のさしがねで、豊、ひなのの専属メイドにさせられてしまうんですね。って、問題だー! 着替え風呂身だしなみ、すべてメイドだよりだったひなの、そんな状況を心配した親御さんが、ちょっとでも常識をつけさせようと青葉荘に入寮させることになって、で、豊に世話をさせようという流れ? 風呂にしてもなんにしても、ひなのがまったく動じない、誰かに介助させること、それが当たり前だから恥ずかしいと思わないっていうんですね。豊からしたら、えらい困った状態なわけですが、こうしたひなのも、いずれちょっとずつ変わっていったりしそうな気がしますね。
『サイドチェンジ!』、サッカーものでありますよ。潰れてしまっていた女子サッカー部を再興しよう、そうしたお話。ヒロインミドリは一種天才的なサッカー少女? ルールとかはさっぱりみたいだけど、そのあたりは妄想過多の浜崎空がサポートするみたい。なんとかして女子サッカー部を復活させて、ミドリを押し出していこう、そうした意図がもうばっちり描かれて見事でした。サッカー部を潰した張本人、生徒会長はドイツ出身。サッカー愛はなかなかのものっぽいですね。部を潰したのは、一時のブーム、盛り上がりを背景に安易に作られたものだったから。じゃあ、実力がともなっていたらどうなのだろう。ミドリと勝負するんですね。おそらくは諦めさせるためなんでしょうけど、会長がキーパー、ミドリがキッカーのPK戦。キッカー有利のためゴールはフットサル用の小さなものを使うことになって、こうした描写、なるほど、しっかり勝負を成立させる要件整えて、しかもミドリに勝たせる、そのためのポイントもしっかり描いて、なるほどしかり、納得させる勝負の行方、これはいい感じでしたよ。サッカーとなると11人? これから部員集め、大変そうですけど、ちょっと期待したくなる、そんな感触がありましたよ。
『もみじ色ステイション』、普通の学園もの? そう思ったら、なんかちょっと違うっぽいよ? あの、背景の効果を撒いてる人がいる!! その導入にいきなりやられて、油断するとやられる!? 腰を落ち着けて読まなければと意識させられるインパクト。実際、このテンションは持続して、面白かったですよ。見た目から予想した雰囲気、見事に裏切られて、じいめうせやがれ!! じいさん連呼、めんどくさいパターン、などなど、可愛いフリして結構ひどい。めんどくさいと思ったら当たり前みたいに放置するし、妄想中の葵、ひどい顔してるし、お金持ちのお嬢様、綾小路とかそういう名前だろうって決め付けてたり、いや、よかったですよ。予想される、あるいは期待されるパターンってありますでしょう。つっこみの形式や感動の形式、あとはよくある設定、そういうものをうまく使って、その都度裏切っていく。その引っくり返し方がうまいと思った。意外とね容赦ない感じがあって、それが面白みをよく引き出していましたよ。
『カラフルアクトレス!』、面白かった。よくなってますよね。小中高一貫校の特性いかして、各世代の学生の交流を持たせる、そんな特活クラブ活動なる制度があるっていうんです。トモカ高校2年生、アカリ中学2年生、ななる小学5年生、そしてあいる小学2年生、この4人があいるの宿題「将来の夢」を手伝う、一緒に取り組むのですが、うまいことそれぞれの個性を提示して、その個性でもって成立する彼女らの関係描いてみせて、その様子は丁寧。読めば自然に彼女ら登場人物の存在感感じとることができる。やさしいお姉さんトモカはちょっと夢見がち? ちょっとクールに見えるアカリ、ツッコミ担当? だけど、格好から入るとか、自意識の見え隠れするところなど、実によかったです。スポーツ少女ななるもいい。あいるの将来なりたいというアニメのヒロイン、朝から試合や練習をするので見たことがないっていう、そういう子。努力家、真面目、けどそういうところをアカリにつつかれる。そのアカリもなんだかいい奴で、ええ、やりとりを通して人となり、彼女らの距離感、意外な近さといいましょうか、それが感じられて、悪くないんですよ。実際、よく練られていた。そう思います。この感触、彼女ら4人の可能性、なかなかのもので、ちょっとしばらく見ていたい、そう思わせる引力がありました。アカリ、彼女がいいポジションをとっていたと思います。いや、彼女が眼鏡かけてるからとかじゃなくて、真面目にそう思ってる。彼女がうまく他の子らの個性もろもろ引き出していた、その役割がよかったんですね。
- 『まんがタイムきららMAX』第10巻第8号(2013年8月号)
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