2013年4月1日月曜日

JOB&JOY

 最初のころは、なんという不真面目娘たちでしょう! ミラクルバーガーにてバイトしている三人、舞花と優也と綾奈、仲がよいのはいいのだけれど、それにしてももうちょっとしっかりしましょうよ。ふざけすぎだよ。なんてこと思ったりする日がくるんじゃないだろうか、密かに怖れていたのですが、いやいや、大丈夫でしたよ。描かれるのが娘三人だった時は、彼女ら、主に舞花と優也の自由気ままさが非常に強く感じられて、いくら綾奈が頑張っても、どうも仕事もの、バイトものという感触にとぼしかった。けれど回を重ねるとともに、仕事場の様子もよく描かれるようになり、そして店長や先輩バイトの利英も出てくるようになれば、彼女らのやりとり、そのおかしみ、楽しさがよくよく感じられるようになってきて、ええ、すっかり気にいっているのですよ。

舞花がですね、ほんと困った子なんですけど、この子が実によくてですね、もうレジは壊すし皿は割るし、けどふざけてるわけじゃない。本人なりに真面目に頑張っている? んだと思うんですけど、子供っぽい? 残念な子? 多分そのどっちも正解なんですが、この子がいろいろやらかすのがね、もうやたら面白い。店長に対しても、もう本当失礼なことばっかりいってる。怖いだのなんだの、好き放題にいってるんですが、店長も怒ってる? そんな風でありながらも舞花たちのこと受け入れてるっぽいところがあって、この不思議な距離感がたまらんのですよ。店長、大人なんだと思うんですね。ちょっとやそっとのことで、いや、怖いといわれたり、また綾奈にガチで怖がられたり、そうしたことに傷ついたりはしてるわけですけど、本気で怒ったりするようなことはない。仕事に関しては厳しい、いいかげんなことしてたらちゃんと叱る。けど、八つ当りするようなところ、感情にまかせて怒るようなところはなくて、ええ、店長のこの態度が描かれたことで、この漫画、ぴしっとしまった。そんな風に感じているんです。

頑張ってるとはいえ、放っておけばぐだぐたになってしまう舞花に、その状況を面白がって乗っかってくる優也。そんなふたりを注意したり叱ったり、けれどどうにもまとめ切れてない綾奈、まだしっかり大人になりきれてない彼女らに対する壁が店長であったり利英だったりするんでしょう。しかたないなあと、なんだかんだで見守っている店長。三人のこと面白がってる利英も、どことなく落ち着きがありますからね。やっぱりちょっと違うんだなあ。こうした年長者の視線があるから、ふわふわ浮ついている娘らのやりとりも安心して見ていられるのかも知れません。まだ幼なさを残しながら、ちょっとずつでもしっかりしていく、ちゃんとできるようになろうという気持ちを持っている彼女らのこと、一緒に見守っていこう、そんな気持ちになれるのかも知れないなんて思っているんですね。

さてさて、舞花、あのヘアピン、色違い5本合わせて虹みたいにしてるのね、可愛いですよ。ほんと、この子らの可愛さ、かなりのものでありまして、描き下ろしのカットですね、色んなおしごとなんかも大変によかった。カバー折り返しの利英もね、舞花優也とはまた違ったふざけかた? する、その可愛さ。キャラクターみんな、人柄に可愛げがある、それは大変に魅力的で、だからこそっていっていいのか、店長の、酷いこといわれながらも、ちゃんと面倒見てる、そうした放っておかない気持ちもわかるような気がするんですね。

  • 井上かーく『JOB&JOY』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2013年。
  • 以下続刊

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