おもちゃメーカー、ホープトイズにて働く新人社員、楠木健郎には姉があるのです。楠木暦、やり手の姉ちゃん。有能で押しが強く、明るく元気で、ちょっとハチャメチャ気味ながらも、部下の人望も厚い、そんな人。で、そうした仕事の評価が、なんで弟タケローに関係するのかというと、ええ、同じ会社で働いているっていうんですね。タケローは総務課平社員、対して姉は企画二課で課長やってる。おもちゃをバリバリ開発するっていうんですが、その仕事ぶりはいかにも楽しそうで、タケローをも借り出して八面六臂の大活躍。これが本当に面白い。読んでいて、なにかわくわくさせられるところがあるんですね。
しかし楠木課長、面白いですよね。ちゃんと仕事してるのか、それとも遊んでしまっているのか、よくわからない仕事ぶりなんですが、ちゃんと結果は出してるっていうのだからたいした人です。大げさな話ではなく、仕事に楽しみを見出すっていうのは、こういう感じなのかなあ。仕事を通じて遊び、遊びもまた仕事なのだ。そういった印象さえ与える楠木課長。しかし、それに巻き込まれてしまうのがタケローであります。
タケローは姉に弱みを握られている! しかし、たとえ弱味なんてなくっとも、きっと好き放題に使われてしまうに違いない。それが姉と弟の距離なのではないか? そう思わせる本作なのですが、タケローを使役するのは姉だけじゃない、他の女性もすごく押しが強くて魅力的。姉のライバル企画一課の北見課長、この人もなんだかんだでタケローのこと使いまくっていて、ある意味お気に入りなのかも知れないなあ。姉の部下である源からんや錦ほまれも、なんだかんだでタケローに関わってきて、それでタケロー、ばっちり使われてしまってますよね。総務だから、職務上いろいろサポートしたりするっていうのはあるだろうけど、タケローに関してだけはその度を超えていて、けどタケローも不憫ながら、酷い目にあわされてる、そんな印象は不思議とないんですね。これはきっと、女性陣の人柄あってのものだろうなあ、そう思っています。なんだかんだで人好きのする人たち。わがままかも知れない、人使いが荒いかも知れない。けど、タケローに対する信頼や情、そうしたものも感じられるから、嫌味とかは感じず、むしろ楽しさ、面白さ、わいわいと元気でにぎやか、いい仕事っぷりだなあ、そういう感想でいっぱいになって、ついつい引き込まれてしまうんですね。
タケローの一年先輩である中田チエさん、すごく落ち着いた人なんですけど、この人はめずらしくタケローを振り回さない。なんだか心のオアシスみたいに感じていて、大好きなんですね。といいながら、北見課長、あの人、なんだかんだでやたら可愛いんですよ。女性以外のキャラクター、重役連中や社長も魅力的で、こんなフットワークも軽くいきいきとした会社があったらなあ、実際自分も働いてみたいかも、みたいなこと思ってしまうんですよ。
- 森繁拓真『あねぐるみ』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2013年。
- 以下続刊
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