2010年7月8日木曜日

ふたご最前線

 ふたご最前線』、終わってしまいましたね。辻灯子は好きな作家。この人は、そんなに長く連載を引っ張るタイプの人ではない、そんな印象があるのですが、それでもなぜか『ふたご最前線』だけは別だと思っていたんですね。幼稚園に通っていた南帆と北斗が、普通に小学生にあがって、低学年から中学年、高学年へと進級、そしてついには中学に入って、高校、あるいは大学までいったりする? いや、そこまで思ったことはさすがにありませんが、けど、ずっとふたりの成長を見守っていけるのかなあ、って漠然とながら思ってた。だから、終わると聞いたあの時、すごく寂しくなって、ああお別れかと、しんみりしてしまったのでした。

第6巻では、南帆と北斗、ついに幼稚園を卒園して、小学生になりました。ただでさえませた子らが大きくなって、知恵も体力もつけて、ほんと小学生ともなれば抑えがきかないなあと、最近うちに出入りしている幼稚園児の数年後を思って、げんなりしました。いえね、南帆、北斗が幼稚園児だったころには、こんな風に具体的にというか、リアリティもって、子供のこと思ったりしなかった。それが時間を経て、子供を身近に知ることとなって、そうなれば南帆、北斗に対してもまた違った見方するようにもなって、こうした読む側、自分自身の変化も含めて楽しく読めた漫画であったなあって思います。

そして、それは描き手にとっても同じだったのかなって思ったりしたのです。後書きによれば、『ふたご最前線』はデビュー作なのでしょうか、S-1グランプリという勝ち抜き式の企画? で4ページを勝ち取り勝ち取り続けてきて、ついに十年というその息の長さ。十年ですよ。五年かければ人は顔立ちも変わるといいます。ましてや十年。思うことも変われば、環境だって変わってしまう。その変化をうけて、かつては思わなかったことや気付かなかったこと、それらが盛り込まれるようになっていったろうと思っているのです。

読む私が変わり、そして作者も変わっていき、そうした変化を、子供たちの成長を通じて感じとり、楽しんでいくことのできる漫画であったと思っています。そして、この先も変わっていくだろうということを、子供たちの変化によって知っていけたらさぞ仕合せだろう、そう思っていたのでした。

けど、第6巻、最終巻。いつもどおりに見えて、最後、子供たちの変化、自意識の変わっていくところ描かれて、ああ、こうして子供たちはだんだんに子供から大人になっていくのだろう、その一歩とでもいいますかね、なんだか感慨深かったんです。まだ小さな子供たち、まだしっかりしてるとはいえない両親。皆が人生の途上、変化しながら歩んでいる。その歩みは、ささやかで素朴で、けれど私だって歩む身です、まるで一緒に旅するようで、ゆえに愛おしく思えた。ええ、ふたごが、両親が、あのおばあさんが、友人たちが、従姉妹もその両親も、皆が愛おしかった。それは、この漫画に描かれる世界そのもの、すべてを愛おしく感じていた、そういいかえても間違いではありません。

最後の最後に、南帆と北斗、それから両親のその後が垣間見られたこと、すごく嬉しかったです。ああ、大きくなったねと、久しぶりに会った子供たちの変わりよう、すごく嬉しくなりました。いつまでも、元気でいてね、そんな気持ちになりました。

  • 辻灯子『ふたご最前線』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2003年。
  • 辻灯子『ふたご最前線』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2004年。
  • 辻灯子『ふたご最前線』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 辻灯子『ふたご最前線』第4巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 辻灯子『ふたご最前線』第5巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 辻灯子『ふたご最前線』第6巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

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