2010年7月24日土曜日

『まんがタイムきららフォワード』2010年9月号

 『まんがタイムきららフォワード』2010年9月号、発売されました。表紙には『夢喰いメリー』、アニメ化決定!!! とのことです。おお、素晴しい。祝着にございますな。『夢喰いメリー』は、この間の展開の、わくわくと胸踊らせるところなど、非常によかった。ああした展開がアニメになって、次々と畳み込まれるように描かれたら、いいものになっちゃったりするんじゃないかな、毎週を心待ちにしちゃったりするんじゃないのかな? なんて思ってしまって、期待しちゃったりするんですね。

S線上のテナ』。最終回を目前として、ああ、いい展開じゃないかって思ったのでした。世界の崩壊を前にして、窮地に追い込まれる恭介。彼を支えたものは、共に戦う仲間たちの思いであった。皆の思いを受けて、彼はついに彼の求めてきた音を掴む! と思わせて、うわー、全然違った。典型的な展開を見せられて、典型的な感動の形式に従って読んでいた、こちらの思惑を見事に裏切って、そうした先に描かれたもの。ああ、これが岬下部せすなのらしさであろうな、そう思いました。世界の崩壊という大きなことを描きながら、世界を支えるという大げさから抜け出してしまう。小さくとも大切なもの、幸せ、気持ちを積み上げよう。人ひとりのリアリティに根差した世界観、それはとても優しいもので、大きな大きな物語を、普通に生きて普通に暮らしている皆にも手の届くものに変えてしまう、そんな力を持っていました。

この物語も、次号で完結。次回はもう世界は助かってしまってて、後日談だったりするのかな。それはわからない。わからないから、楽しみにしてしまって、それはこれまで共に旅してきた、そんな思いを読者にも与えてくれたから。彼らのその後、皆が仕合せになってくれたらいいな、そんな気持ちにさせてくれるからかと思います。

『トランジスタティーセット — 電気街路図』、めちゃくちゃ面白かったです。途中まで、夏だから海いって、水着いっぱいで、目にも麗し、いかにもの風物詩、みたいに見せておきながら、ほどなくしてマニアなおっさんたちの真空管工作に突入、もうこれが最高でした。商店街の慰安なのか保養なのかでやってきた海。海の家にて発見した古い真空管ラジオを直そうというのだけど、なにしろ海だから手持ちの工具、手持ちのテスター、手持ちのトランスでやらないといけない、って、なんで工具もテスターも、トランスさえも持ってきてやがるんだ。って、そのトランスのくだりが最高で、まさしくナイスバカ。というか、バカしかいない。しかし、バカだからこそわかりあえる世界というものが描かれていて、もうしびれましたね。いや、ほんと、最高でした。それこそ、電子工作楽しそうだな、自分も彼らのようなバカになったらものすごく人生楽しくなりそうだ、そんなこと思わせてくれるほどの面白さでありました。

『大江山流護身術道場』。空手をずっとやってきたというお嬢さんが、大江山流に出会っていろいろ疑問に思うようになり、ついに道場を訊ねた。そこで知る武術とは違った価値観、だんだんにクリアになっていく思考、そうした気付きの整理されていくところは丁寧でよかったななんて思ったのでした。でもさ、その反面、同じように考えが整理されていく、そんな流れが示されてたと思ったら、なんでそんな結論にいたったんだあんたは……。まさしく迷走が描かれていて、このどうしても間違ってしまう彼のその思考、その連続が今の彼を作り上げたんだろうなあ、そんな気持ちにさせられて、悲しくも最高。兄さんには申し訳ないのだけど、すごく面白かったです。

少女素数』は、メランコリック展開は前回で一段落、というわけで平常回っていうのかな、進級以前の雰囲気など感じさせてくれる回でした。すみれ、あんずふたりの誕生日。14歳になりました。誕生会でドレスアップ。けれどふたりはちょっと御機嫌ななめで、でも最後に御機嫌もなおって。そんな話だったのですが、見どころは富士夫兄さんのような気もします。双子の回想にあらわれる詰襟富士夫。朴訥として優しげで、そして今の富士夫。ちょっとシリアス? けど母からの鋭い指摘に頬染めたりしてね、そしてドレスアップ富士夫ですよ。どひー、いい男。すっかり、この漫画本来の見せどころを逸脱して喜んでる私ですが、こういう回もあっていいよね。ええ、けど、富士夫兄の見ているふたり、その印象の変化など、それらはまさしく『少女素数』で、そして兄の変化が気になってしかたのないふたり、それもまさしく『少女素数』であったのですよ。

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