2007年5月7日月曜日

パティシエール!

 ついこないだ1巻が出たと思ったら、早々と2巻。こうした異例の刊行を見ても人気のほどがうかがえると思うのです。本日、『パティシエール!』の第2巻が発売されました。製菓学校を舞台に繰り広げられる、パティシエの卵たちの和気あいあい劇。主役は皆からねーさんと慕われる森山まさこ。彼女のまわりには若さと希望にあふれる学生たちや、厳しくも愛情にあふれる教員たちが集まっていて、その様があんまり楽しそうに見えるものだから、読んでると学生に戻りたくなってしまいます。そうなんですよね。この漫画は、学生時分という面白さに満ちた時代を描いて、その面白いと感じさせるエッセンスをしっかりと盛り込んでいる。きっとここが魅力なんだろうと思います。

学生の面白さってなんなんだろう。あるいは学びと言い換えてもいいのかな。『パティシエール!』はこうした問に充分答えてくれる漫画であろうかと思います。

学生時代の魅力といえば、自分が好きで選んだこと、興味のあることを知ることのできる面白さ。これがまず第一でしょう。この漫画の学生たちは、それぞれに異なる動機でもって製菓の道に進んで、その面白さも厳しさもともに味わっています。自分の未熟であることを知っては、それを克服しようと特訓を重ね、研究も怠らないという、このチャレンジに面白さがあるのです。これは技術の世界でも知の世界でも同じだと思うのですが、自分のできないこと、理解できていないことを遥か高次のレベルでこなしてみせる人間がいるという事実に直面したときに、ひるみながらも前に進むことを選んだ人というのが、いずれその道の面白さに行き当たるのだと思います。自分はものにならないかも知れないという不安とともに前に進むということの苦しさといったら、それはもう筆舌に表せないほどではあるんですが、けど後から振り返ればそうした時分が一番楽しかったりするんですよね。逃げることなく、まっすぐに取り組み、やり遂げたと胸を張っていえるならなおさら。そうなんですね。この漫画の登場人物たちは、まだ途上ではあるけれど、真っ正面から問題に取り組もうという意気にあふれているから、見ていて気持ちがいいんだと思います。

でも厳しいだけが学生生活ではなくて、しんどい山があったとしてもそれを一緒に乗り越えようという学友がいれば、きっとそれは素晴らしいことなんだと思います。ひとつの課題に取り組むこともあれば、各個別の問題を片づけているときであっても、フォローしたりフォローされたりという、そういう協力関係みたいなのがあって、もちろんそこには負けたくないというような思いもあるんだけど、出し抜こうとかそういうのじゃなく、一緒に乗り越えて、一緒に大きくなっていこうよというようなそういう関係がある。『パティシエール!』にはこうした友人関係の面白さがあふれているのですが、それは学びの現場における厳しさだけじゃなく、遊びやおふざけも含めた、楽しい時間を皆で作り、皆で過ごしていくというような一体感が感じられます。その一体感というのも無理に作られた感じはなくて、皆がそれぞれに、自分なりのやり方で同じ方向に進んでいるという、そういう感じがいいのです。

前にいったように、ヒロインのまさこねーさんは二十代中盤の歳の離れた学友であるわけですが、いわばちょっと毛色の変わったまさこを受け入れる雰囲気が漫画にはあふれていて、その雰囲気があるために個々の生徒、教師の個性なんかもうまく膨らまされて、すごくよいアンサンブルができあがっています。私が上に書いてきたのはちょっと大げさに過ぎますが、けれど学びの厳しさと面白さ、努力、友達関係の大切さみたいなのはしっかり伝わってくる漫画です。そして、こうした面白さに触れて、やっぱり学生時代は面白いよなあって思うのが私なのです。

蛇足

申し訳ない、大げさに書きすぎてしまいました。ほんとは、猫好きの宮本先生が可愛すぎると書きたかったのですが、なんだか暴走してしまって、その余地がありませんでした。なので、余談として付け加えておきます。

  • 野広実由『パティシエール!』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 野広実由『パティシエール!』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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