もともとは『艦これ』人気を受けて見ると決めたんですよね。アニメ『蒼き鋼のアルペジオ』。突如出現した霧と呼称される艦隊により、活動範囲を著しく制限された人類と、霧の潜水艦、イ401に、そのメンタルモデルであるイオナとともに乗り込み戦う少年少女の物語。というのですが、この時点ではその持ち味はいまいち伝わってこず、ええ、素直にはっきりいいまして、『艦これ』がなかったら見てませんでした。最初にその存在を知ったのは、模型誌でしたね。『ガールズ&パンツァー』の影響で買いはじめた『モデルグラフィックス』誌。これで紹介されていて、艦船ものも流行ってるし、コラボとかいったりしてるし、一応見てみるかあ、そんな程度の気持ちで見始めたのでした。
そうしたら、これが面白かったんですよ。第1話見た時の感想は、最近はやりの、主人公に重巡な、おっと、従順な美少女ものの一バリエーションなのかな、今期でいえば『機巧少女は傷つかない』なんかもそうでしょう、いや、こっちはちょっと従順ばかりとはいいがたいけど、ともあれ、そういうのかなって思ってた。従順な美少女イオナをしたがえ、大鑑巨砲主義的に、長射程大威力でもって、重巡な美少女タカオを撃破する美少年艦長。この描写は第2話ですね。この時までは、ううーん、CGモデルで作画されたという人体の進歩と、さすがのメカ描写には唸るけど、それ以上ではないかなあ。みたいなこと思ってた。ところが第3話第4話にがつんとやられまして、大戦艦ハルナ、キリシマを迎え撃つイ401の勇姿。ああーん、お姉さまーん、じゃなくて、使える兵装に制限がある状況で、普通ならおよそ勝目のない強大な敵を相手に充分以上に立ち回り、しかも勝利して見せるその展開には興奮させられたし、そしてハルナにキリシマですよ。人の姿に似せた姿を持ちながら、ついぞ人の感情を理解しなかった彼女ら。それが、まさか訪れるなどとは思っていなかった自らの死に触れようとしたその時に、生への執着を知り、自らの決断を後悔する。あの場面は屈指でした。最終回かと思った。それからはもうノンストップ。おおう、これはイ401クルーではなく、霧のメンタルモデルたちの心の物語であるのだな。そう理解して、すっかり心とらえられてしまいました。
その後、原作を購入。電子書籍で読んでるのですが、冊子だとカバー下にオマケがあるそうですよ。うう、読みたいなあ。電子にもカバー下オマケ、つけてくださいよう。さて、原作を読んでびっくりしたんですよ。なんじゃこりゃあ、全然違うじゃんか! 重要そうな人物が、人類側といい霧側といい、ごっそりごっそり抜けておる。アニメだと、人を知り変わっていく霧のメンタルモデルたち、みたいなニュアンスが強いのに、原作は、そうした変化していく霧という要素と同じくらいの重みで、人類側の政治やイ401クルーと共闘する人たち、また決して一枚岩ではない霧といった要素、もうどれくらいの勢力が押しあいへしあいしているの? めちゃくちゃ面白い。それに、人物もちょっと違ったりするんですね。一番違ってるのは、やっぱりイオナ姉さまかなあ。従順で若干無機質とも感じられる美少女、そんな印象感じさせるアニメのイオナと違い、原作のイオナはちょっと生意気だったり挑発的だったり、あとものごくコミカル、人間臭さなんかも感じさせたりするんですね。わお、セーラー服とTシャツの違いだけじゃなかったんだ! ううん、自分は原作イオナの方が好きかな。いや、アニメイオナも、原作イオナの立ち位置に向かって、これから踏み込んでいくんだろうなあとも思うんですけどね。ともあれ、味わい、そのポイントが全然違うところに設定されている。別物と思って楽しむのがよさそう、そんな風であるのです。
原作を好きで好きで、という人の中には、アニメの展開に納得いかない、そう思う人も少なくないだろうなあ、そう思っています。いや、だって、それくらい違うもの。どう考えても、この人抜いたら駄目だろう、今後の展開どうするの? レベルのキャラクターが何人も抜けていて、抜けているだけならいいけど、完全にポジションが違ってしまった人もいて、おおう、こりゃ修正不能レベルだな。ほんと、それくらい違う。けど自分は、原作とは少し違うハルナ、キリシマの感情の描かれ方、それをいたく気に入っているので、アニメのあり方も許容します。というか、1クール12話という決して多くない話数で、原作どおりは無理だと思う。思い切った改変、それがむしろよかったとも思う。けど、これ、そのまま第2期って無理がくるよなあ。どうするんだろ。
アニメで、『アルペジオ』面白いな、そう思った人には原作の一読をおすすめします。もっといいから。もっとガツンとくるから。すごいから! カーニバルだから!
ああ、アニメの続きも楽しみです。こっちもカーニバルだよ!
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第1巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2010年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第2巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2010年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第3巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2011年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第4巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2011年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第5巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2012年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第6巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2012年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第7巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2013年。
- Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』第8巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2013年。
- 以下続刊
BD
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