『プレフレ』、この面白さを伝えるにはどうしたらよいのだろう。ちょっと途方に暮れているのです。表紙の女の子三人組、手前から椿、楓、樹。みんなとてもいい子で、さばさばとして気さくで気楽で、いっつも楽しそうにしてるのね。学校で家で遊びにいった先で、わいわいとやってる。べたべたした甘さはなく、さっぱりと、ちょっとドライ? そんな印象さえあるこの漫画。はげしいつっこみもあるけれど、彼女らは基本的に常に現実寄りに立っていて、不条理なギャグはないし、ネタだって、会話に現れることだって、常軌を逸した? 超常的な? そういうようなことはまずないといっていい。なのにこんなにも面白い、おかしい、そして可愛い。なんなのだろう、この魅力の源泉は。この漫画を読んで、おかしみにくすりと笑う、自分の心の動きを観察して、けれどその機微を、これだ、ととらえることができずにいるのです。
一体なにが面白いのか。面白いと思ったエピソードを列挙してみせることは簡単です。落書き、美術の授業、持久走、視力に姉ちゃんに、まだまだいくらだっていえる。美術の授業での椿の打ち明け話、あれはもう笑いをこらえるのが難しいレベル。そういったぐいぐい押してくる類の面白さがあちこちに顔を出して、いやもう面白いな、おかしいな。そして愛らしい。椿が、椿が、楓が、樹が、そして猫俣もそうですね、皆気安くて、全然可愛こぶったりしないのに、やたらめったら可愛い。地が出てるといったらいいのかな、友達のことからかったりおちょくってみたり、そうしたら憤慨したりやり返そうとしたりするでしょう? そこに彼女らの地金が出てくる。気取るでなく、飾るでなく、ありのままにあって、それが魅力的。気の置けない彼女たちの関係の、無理なく付き合って、心安い。本当に親しい友人間でこそ生まれるといってもいいのかな、ちょっとふざけたりも、あるいは真面目に本音を伝えたり? そうした対話、言葉のやりとりやふれ合い、ああ、それだけのことがなんであんなに楽しかったんだろう。懐かしく思い出したりしてるのかな。少なくとも、彼女らの関係を通し、昔は自分も得ていたかも知れない、ただ話して、一緒にいて、それが楽しかったという時間、その輝きが今まさにてのひらの上、開いたページのその上に息衝いている、そう感じられるから楽しく、面白く読むのかな。ええ、彼女らの普通の友達関係、その面白さを思うほどに、わからなくなるんです。特に目立ってなにか事件がおこるわけではない、そんな彼女らの毎日、それがこんなにも面白いのはなんでなのか。簡単ではないと思います。
眼鏡をかけてちびっ子の椿。この子が勉強苦手で、むしろ運動が大得意。体育の授業で大活躍、趣味で自転車乗ったりしてるというのね、そういうところがよいなって思ったんですよ。あと樹、この人も。いかにもスポーツ得意そう、そんな風なのに、実はそうじゃない。外見が与える印象、それがまず違ってる。椿と樹、まるで逆なんですね。第1話でそうしたところ示された時、うわあ、やられた、そう思って、一度に気にいってしまったのでした。当たり前を当たり前に描く、そして同時に、読み手が、ええと私がというべきか、勝手にこうだろう、こうなんじゃないかと決めつけてくる先入観、そいつを見事に外してくれる。それでこういう人だ、こういう性格だ、そう思ったところに、また違った側面、また違った表情を見せてくれる。楓なんて、まさにそれでしたよ。回を、エピソードを重ねるごとに登場人物の個性、多面的になっていく。深まるキャラクター、人間性に、ああこういうところも魅力的だなあ、そう感じさせられること頻繁で、ほんと、守ってあげたいなあ。
まあ、とにかく読んでみて欲しいのです。そして好きになって欲しいのです。
- ちび丸『プレフレ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2013年。
- 以下続刊
0 件のコメント:
コメントを投稿