癖のある漫画です。絵に、見せ方に、そしてキャラクターにも癖があって、人によってはとっつきにくいと感じるかも知れない、そんな漫画なんですが、1巻分、時間を、紙数を重ねて見事に人の情の深さ、その不思議を描いてくれたなあ、そんな思いがするのです。主人公は円でしょう。女の子。クラスメイトの鋼音と一緒に暮らしてる。放っとけなくて、それから友達として、鋼音を大切に思っていて、けれどそんな円と鋼音の関係が一気に変わってしまう事件がおこる。友達だったはずのふたりが、婚約者に、さらには夫婦になるというのですね。女の子同士だというのに夫婦。なぜそんなことに? そして突然妻になってしまった円の心情。あるいは鋼音を追ってきた鋼太の胸のうち。だんだんに描かれて深まってゆくのです。
鋼音を追ってきた鋼太。鋼太は鋼音の、元がつくとはいえ許婚。思う相手を迎えにきたというのですが、残念ながら鋼音の方にはその気がない。鋼太を諦めさせなければ、そう思って鋼音のとった手が円との偽装婚約であったというのです。同居しているふたり、実はこういう関係なのだと鋼太の前でキスをして見せて、ふたりはつきあっていると表明してみせた。新しい婚約者がいるので諦めてくれ、そういう作戦であったのですが、残念ながら思惑どおりにはいかなかった。鋼音を諦めるなんてできないと鋼太が転校までしてきた。そして偽装許婚だったふたりの関係はさらに進んで偽装夫婦になって、円と鋼音の関係も当初のものから少しずつ変化していく。その変化していくもの、円の気持ち、鋼太の思い、そして鋼音の選択。なんと人の心とは面白いのだろう。いじらしく、思い、焦がれ、恋破れ、傷つきながらも、それでも思わないではおられない。それが恋なんだと思う。そして精一杯の勇気を振り絞る、そうした姿を応援しようとする思いもまたあり、思いながらも叶わない、重なりそうで重なり合うことのなかった恋の果て。けれど恨むでもなく、ただただ見守ろうというそのいじらしさが胸に沁みたのでした。
コメディだった。思い付きでとっさについた嘘、そこから生じた関係に振り回されて、そうしたごっこめいた恋心、気持ちの揺れる様がおかしい、そんな漫画と思わせて、実はそうではなかったというのだから、ええ驚かされたのです。細やかに描かれる心情、その余韻、情景もまた豊かであって、けれどこれは面白くおかしかった序盤から読んでこそ一層に伝わるものでありましょう。こうした展開は当初から予定されていたものなのか、あるいはこうならないではおられないほどに、彼女らの思いはつのり物語に働き掛けたのか。それはわからない。わからないのですが、けれど彼女らの心の動きはなんとも自然と思われて、それだけに不思議とひきつけられるものがあったのです。素朴であるがゆえに、静かに沁みて、なにか自分も彼彼女らを見守ろうと思える、そんな気持ちにさせられるのでした。
- 鴨鳴アヒル『▲コンプレックス』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2013年。
- 以下続刊
PlayStation Vitaを買ったのは、

『まんがタイムきららフォワード』2013年5月号、発売されました。表紙は『がっこうぐらし!』。グランドピアノ、そこにいるのはショッピングモールに立て籠ってるあの子です。凛々しい目、ショートカットも、靴下どめも、この子のシャープさ引き立てて魅力的。そしてゆき。このイラスト、ふたりの出会いを思わせる、そうした含みがあって、ええ、これ、まさしく本編への繋がりを持っている。遠足と称し、街へ、他に生存者がいないかと探しに出たくるみたち。彼女らが訪れた先、ショッピングモールに暮らしていた彼女と、ついに出会えるのか!? いや、出会えないわけなかろう、そうは思うんですけど、気を揉ませる展開に、この表紙でありますよ。
『ちっこいんちょ』の1巻が発売されましたよ。いいんちょは少し、ちっこい。身長およそ17センチメートル、って、少しどころじゃなくちっこいよ! 体が小さいので、当然声も小さい。なにをするにも大変で、登下校時は友達や猫に送ってもらったり、助けられながら暮らしています。けど、成績優秀、面倒見もいいために、皆からの信頼もあつく、友達だって多い。助けられることも多いいいんちょだけれど、むしろいろいろ手助けしてる、そんな印象の方が強いくらい。そんないいんちょの、どう考えても普通じゃないのに、なんだか普通に思える日常。不思議とほのぼの、楽しそうな毎日が描かれて、ええ、実によいのでありますよ。
iPadを入手しましたよ。以前から欲しい欲しいといってたわけですが、なにぶん安い買い物ではない、なくともなんとかなってる、そういう場合ってなかなか手が出ませんよね。こんな時はなにかきっかけがあれば、そう思うわけですが、ええ、インターネットプロバイダのポイントが貯まってまして、しかも3月末で消えるよっていわれてしまった。これがいいきっかけになってくれましたよ。交換品の中にiPadがあった、16GBって少なかったりしないかな、心配もあったのですが、とりあえず使ってみれば? との声もいただいた。残念ながら交換に必要なポイントには遠く及ばなかったのですが、差分は現金で払えるよっていうものですから、つまるところ割引ですね、2万円ちょっとで16GBモデルを入手することができました。
なんか、ものすごく売れてるらしいですね、『閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-』。1週間たたずに
『プレフレ』、この面白さを伝えるにはどうしたらよいのだろう。ちょっと途方に暮れているのです。表紙の女の子三人組、手前から椿、楓、樹。みんなとてもいい子で、さばさばとして気さくで気楽で、いっつも楽しそうにしてるのね。学校で家で遊びにいった先で、わいわいとやってる。べたべたした甘さはなく、さっぱりと、ちょっとドライ? そんな印象さえあるこの漫画。はげしいつっこみもあるけれど、彼女らは基本的に常に現実寄りに立っていて、不条理なギャグはないし、ネタだって、会話に現れることだって、常軌を逸した? 超常的な? そういうようなことはまずないといっていい。なのにこんなにも面白い、おかしい、そして可愛い。なんなのだろう、この魅力の源泉は。この漫画を読んで、おかしみにくすりと笑う、自分の心の動きを観察して、けれどその機微を、これだ、ととらえることができずにいるのです。
