昨年11月に復習しはじめた和声、その1巻がもうじき終わるので、第2巻を買いにいったのでした。そしてついでに、今度こそちゃんと学ぼうと思っていたジャズ和声のテキストも買いまして、それはマーク・レヴィンの『ザ・ジャズ・セオリー』。ちょっと高い本なのですけど、平易でわかりやすく、内容も充実しているという話です。中途半端にいろいろ試して回り道するくらいなら、がつんと定評のある本を買って、しっかり学んだ方がいいよね、との判断から、買いました、がつんと。そしてその内容に、さすがよいといわれるだけはあると感心している次第です。
かなり大きな本です。30cm。大型本って感じがします。ページ数も496ページとかなりのもので、寝転んでぱらぱら見ようなんてのはちょっと無理なサイズですね。だから、きちんと座学したい。できればピアノの前に座って、実際に音を出しながら読み進めたい。そう思わせる本であります。
本を開いての印象は、思った以上にすっきりとして、余白が多い、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたような窮屈さとは無縁です。そして譜例が豊富。有名曲から引用されたフレーズがあれば、コード進行の例があり、さらにはスタンダード曲のスコアがあり、しかもリハーモナイズ例まで載っている。丁寧な仕事に感謝します。なんせ、よくわからないうちは実際にどうやるのか真似するのが一番で、それも曲の一部やコード進行例に対して試すのではなく、実際の曲においてはこうやるという、まさに実例ともいうべきものがそこにある。ありがたいです。
この本の扱う範囲は、和声に留まらず、楽式に相当するのかな? ソング・フォームの説明、さらにはリード・シート、楽譜の読み方や曲の覚え方といった章まで用意されていて、いたれりつくせりともいうべき親切さです。さらにはハーモニー、和声、コード進行についての解説中にも演奏の際のヒントがあらわれてくるので、これが作曲やコードづけに役立つだけのテキストではないということが理解されます。実際の話、解説はほぼ演奏の歴史であるともいえます。何年代にはこの音はこう扱われていたが、後にはこのような扱いに変化したなどなど、説明がされたと思えば、譜例が提示されてその響きを確認することが可能です。徹底した実例主義は、この本が実践されることを前提にしている証拠ともいえて、実際眺めているだけではおさまらない。鳴らしたい、試したいという気持ちがむくむく持ち上がってくるような、そんな本であります。
私はまだこの本の序盤を読んでいるところですが、これまでずっと抱えてきた疑問、なんでジャズではモード(旋法)という概念を使うんだろう。むしろややこしく、わかりにくくなるだけなんじゃないのか、といった印象がクリアになりました。ええ、やっとこさ、モードを用いる発想というものがわかったのです。なるほどね、そういうことかと理解して、このように、過去に触れた理論の解説ではいまいちわからなかったことが、こうして解決していくのは、ためになるならない関係なしに、ただただ面白いことであるといえます。ええ、楽しみながら読んでいける、そうした体験、すごくありがたいです。
- レヴィン,マーク『ザ・ジャズ・セオリー』愛川篤人訳 東京:エー・ティ・エヌ,2005年。
- Levine, Mark. The Jazz Theory Book. California : Sher Music Co, 1996.
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