2010年1月31日日曜日

ろりーた絶対王政

 ふと今朝、手にした『ろりーた絶対王政』。以前、『まんがタイムきららフォワード』に連載されていた漫画であります。主人公鷹彦の家に住むこととなった双子の姉妹、るるとりり。しかし、あまりにも似ていないふたり。妹があまりにも幼なすぎて、これはなにか秘密があるのではないかと、周囲の人たちならずとも思ってしまうのは作者からしたらしてやったりというところでしょう。そして実際、るるとりりは秘密を抱えていたのでした。その秘密を知り、関わっていく中で鷹彦は妹のりりにひかれていくのですが、このふたりの関係がとにもかくにもよくて、それは真摯でストイックなラブストーリー。ほのぼのとして、時に胸を打つ、そんな展開も見せて、そしてあのラストにいきつくところなど、実によかったのでした。

妹りりの秘密、それは端的にいえば、小学生だっていうことでした。高校生の姉、るると双子であると嘘をついて高校に通うりりは、高校の授業についていくばかりか、トップクラスの成績を記録して、しかしそれはなにもただ天才だからというような話ではなくて、影には相当の努力があってという健気な話なのです。そこまでして、無理をして、るると一緒にいようとするりりの心情。そのためにはらわれる労力。それらを身近に見て、接して、感じて、鷹彦はりりに心を寄せるようになるのですが、実際、無茶無理無謀と思えることを必死でなそうとしている女の子を見て心を揺らさないなんてことがあるでしょうか。いや、あるはずがない。しかもそれがあんなに可愛い女の子であるのですから、なおさらでしょうよ!

鷹彦が、りりの秘密を知りながらもひかれていく。鷹彦の気持ちが確かめられるような機会は何度かあったのだけれど、鷹彦は常に真摯であって、そして一線をわきまえるべく心を砕いている、その態度に好感を持ってしまったというのも、この漫画を好きになった理由のひとつであるかも知れません。小学生らしいというべきか、あるいは小学生にしてもそれはあんまりというべきか、無防備なりりに心を乱されっぱなしの鷹彦。女の子が苦手で、ずっと警戒意識いっぱいであったがために、女の子の気持ちがわからない。それで付け焼刃的に学習して、なんとかしてりりを喜ばそうと頑張るんだけど、そうしたら今度はりりが誤解して、鷹彦に嫌われた? なんて思っちゃう。このジレンマ。はたから見てる分には、危機的というよりもむしろ微笑ましさばかりが目立ってしまうのですが、この微笑ましく見守っていられる年の差カップルもの。高校生男子と小学生女子という、一種ぎりぎりの関係が、いじらしくてしかたがなかったのでした。

これはひとつの美しい夢なんだ。そんな気がします。男からの夢というよりも、少女からの夢といったほうがよりらしいかな。同年代の子供っぽい男子じゃなくて、年上の男の人に憧れる。けれどその男の人も恋愛には慣れてなくて、だからちょっと主導的に振舞えちゃう。そしてここが重要なんですけど、恋愛の対象として見てくれるけれど、性的対象として欲望をぶつけられるという心配がないというところ。アンファン・テリブルな女の子の、安全の確保されている恋愛的冒険ですよ。このアンバランスともいえる状況が成立するには、鷹彦という朴念仁が必要だった。恋愛そして女の子に不慣れであるために、子供っぽさ残すりりとも対等な位置にまで降りてきてくれる。りりに翻弄され、戸惑いを見せながらも、りりという恋人のいることを素朴に喜んでくれる。そしてなにより、りりを大切にしてくれている。そうした鷹彦とりりの初々しい恋愛の状況が、読んでいて罪のないものと思われて、すごくよかった。恋愛の、一番甘い部分をすくいとったような漫画でありました。

そういえば、りりの父親ですけど、りりに好きな人がいるって聞いて、最初はものすごく反対していたのに、なんだか最後には認めてくれている? そんな変化があったように感じられたのですけど、これって鷹彦を実際に見て、知って、ああこいつならいいや、ってなったのかな。真面目な少年。鷹彦の信頼性の高さは、この漫画においては実に大きな要素であったのかも知れません。

  • 三嶋くるみ『ろりーた絶対王政』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 三嶋くるみ『ろりーた絶対王政』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 三嶋くるみ『ろりーた絶対王政』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。

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