2010年1月20日水曜日

「けいおん!」第7巻

 アニメ『けいおん!』の最終巻、第7巻が届きました。ああ、これで一段落ですね。もちろん、バンドスコアなど関連商品はまだまだ出ますし、第2期も決定しているしで、これで終わりってわけじゃないってことは重々承知しているのですが、けれどこれでひとまずは終わり。うん、ちょっと寂しいですね。でも一番寂しく思ったのは、あの、オープニングを見た時の感覚がもう違ってしまっているってことであったりします。『けいおん!』のオープニング、あれを見る時はいつだって、さあはじまるぞっていうわくわく感にあふれていたものだのに、今はもうそんなには盛り上がれなくて、ああ『けいおん!』は私の中で過去の思い出になろうとしているのだなって思わないではおられず、その過ぎ去っていくという感覚がもう本当に寂しいのでありました。

『けいおん!』、番外編である「冬の日!」については書いたことがあるので割愛するとして、「ライブハウス!」、BD/DVDではじめて公開された回ですが、これさすが番外編とでもいうべきでしょうか、「冬の日!」とはまた違った異質さがあって、すごく面白かったです。これまで学校やクラブ、友人たちといった、ある種内輪の世界に限定されていた展開が、決定的な外部に関わるという実にアウェイ感ただよう回でありますよ。年末のライブイベントに出演することになった放課後ティータイム。ライブハウスにいけば、受け付けのお姉さんがいる。ライブ当日となれば、対バンの面々とも出会う。なんだか彼女らが借りてきた猫のようですよ。とはいえ、なんだか唯だけは終始マイペースで、物怖じしない娘です。それが彼女の魅力なんだっていうのはコメンタリーでも語られたわけですが、いや実際、慣れない場所、自分たちの場ではない、そんなところで戸惑ってあたふたして失敗するみたいな話はよくあることで、けれど唯や紬のマイペースさが不要な緊張をほぐしてくれたり、また失敗したとしても対バンの人たちが励ましてくれたりで、こういう本編ではちょっと見られなかった交流とかね、すごくよかったですよ。

特別な話、だから番外編、なんでしょうけれど、限定空間において大活躍してきた彼女らの、ある意味等身大の魅力を伝える、そんな意味ある回でもあったように感じています。本編において特別であり続けた彼女らは、実は特別でもなんでもない、たくさんいるバンドをやってる人たちの末端であるってことがわかる。けれど、そんな彼女らは、音楽をやっている人という層を構成する一部であり、ひとつの典型でもある。バンド活動に対して一生懸命、常に全力投球なんていうのは彼女らのらしさではないのだけれど、そうしたあり方もバンド、音楽の世界のひとつの相であるんです。音楽は、音楽で身を立てようという人があれば、楽しみとしてやる人もある。そのどれもがいいんだよ。ラヴ・クライシス、デス・バンバンジーといった、今回関わりを持ったバンド、彼女らのようなあり方も、放課後ティータイムのようなあり方も、どれも音楽の世界においては正解なんだよ。そうした世界の広がり、多様さを感じさせて、そして『けいおん!』は、唯、澪、律、紬、梓、彼女らの、音楽を仲立ちとした青春を肯定して、ゆえにこんなにも魅力的であったのでしょうね。

オーディオコメンタリー、キャストコメンタリーはメインの5人を演じられた方々によるもので、今回は前回からちょっと時期があいたっておっしゃってましたか? そのためか、ちょっとだけ落ち着いた感じでありまして、けれど皆さんわいわいと楽しそうである様子は変わりありません。仔猫の声の話、新宿の朝になってしまうって、ええー、それはちょっとっていうような面白裏話があれば、律っちゃんのおかしーしに対するおかしくねーしの一斉つっこみも楽しくて、ああ面白いなって。そして「ライブハウス!」においては、対バンのお姉さんに対するコメントが面白かったし、そして、5人がステージを下見したときのコメント、「らじおん!」の企画でステージにのった時の思い出話なんかもあって、ちょっと感慨深い。そして鼻血ですよ。事前に渡されたビデオではなかったのにってやつ。そのどよめきについてはスタッフコメンタリーでも触れられていて、よっぽどだったんでしょうね。いや、しかしあれはしびれましたよ。うわ、鼻水に留まらず鼻血まで! って私も思いました。

そして、スタッフコメンタリー。山田尚子さん、堀口悠紀子さん、竹田明代さんの御三方。山田さん、堀口さんは第1巻ぶり、竹田さんは第6巻に続いて、ですね。いやしかし、しびれます。皆さん、よっぽど仲がよろしいのか、あるいは単にしゃべりなのか、様子見といった雰囲気など皆無にして、最初からスムーズな語りで聴かせてくれます。番外編なので、これまで一緒にいるところがメインだった彼女らの、ひとりの時を描きたかった(「冬の日!」)、外の世界に出させたかった(「ライブハウス!」)、といったことが話されて、いやもうしかし、スタッフの愛というものが実感されますよ。皆から愛されている唯、その理由に迫るとかね、律っちゃんの女の子の顔、思春期の表情を描く、とかさ、その時々の意図、目的が語られて、実によいコメンタリー。背景動画、動背っていうの? セルの暖かみが好きというコメントもあれば、バイト先でタイムカードを押す紬のシーン。脚のアップのカットが好き? とかいうのも面白く、ああそうだよ、はなたれ唯、そんな主人公が好きだ! とかも面白い。冬の海、演歌やなあ、なんてのも面白い。色彩についても、「冬の日!」は彩度がかなり落とされている、「ライブハウス!」も冬の色を使っている、そんなコメントあり、またエンディングの澪の衣装。青緑と決まるまで、いろいろ試行錯誤したっていうようなのね。そういう楽しい裏話がいっぱいでした。

印象に残った話は多いけれど、律の弟、聡に対するコメントの数々。めちゃくちゃ設定があがるのがはやかったとかね。ええい男の話はいい! と思った人も多かったんじゃないかなんて思いますけど、私は本編見た時から、おお、なんか可愛い少年だ、というか友人がかっこよすぎ! とか思ってわくわくした口なので、実に楽しくて、色の指定が赤固定だったとかいうのもすごいなって。ああ、聡に対してはキャストコメンタリーでも盛り上がってましたね。それと、「ライブハウス!」の男性スタッフ。長髪のリクエストが却下されたとかいうくだりは、聞いててめちゃくちゃ面白かったです。

「ライブハウス!」のコメントでは、演出の石立さんに関するものが面白く、丁寧に動かす人ということ。でもって、動画に手を入れて増やしちゃうっていうんですね。だから、動画マンが戦いですよ、っていって、石立さんに手を入れさせてなるものかって、どんどん動画枚数を増やすから、「ライブハウス!」はどんどん膨らんで、過去最高枚数を記録したんですって。 その、戦いっていう表現が面白くて、しかしよく動く「ライブハウス!」と、意図的に止めを多様した「冬の日!」。表現されることも、その手法も対照的なふたつがこうして揃って収録された第7巻は、なかなかに面白いなって思って、ええ、すごく見ていて楽しく、面白かったです。

面白かったです。けど、これでいったんお別れですね。ああ、お別れはいつだって寂しいけれど、だからこそというべきでしょうか。いずれの日にか、またお会いする日を楽しみにしています。

Blu-ray Disc

DVD

CD

  • 「らじおん!」スペシャル! Vol. 1
  • 「らじおん!」スペシャル! Vol. 2

原作、他

  • かきふらい『けいおん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • かきふらい『けいおん!』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • かきふらい『けいおん!』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

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