2010年1月8日金曜日

セックスなんか興味ない

 漫画の買い出しに書店にいきましたら、きづきあきら、サトウナンキの『セックスなんか興味ない』が出ていました。きづきあきら、サトウナンキといえば、『ヨイコノミライ』からの読者ですけれど、気付けば『モン・スール』、『侵蝕プラトニック』もろもろ、一通り買ってしまっていて、なんだかファンみたいです。いや実際好きなんですが。なので当然のように『セックスなんか興味ない』も購入。しかし、出版者が、読者が求めるからなのか挑発的なタイトルであります。

これは読み切り短編連載とのこと。セックス、性行為が介在する男女の恋愛ものなのかな、なんてあたりをつけたのは、以前、まだ『IKKI』を読んでいたころのこと、きづきあきらの『恋愛人形』という短編が掲載されたのを読んでいたからなんですが、おそらく評判がよかったんでしょう。大人の恋愛なんだけれど、どことなく不器用、どことなくぎこちなさを漂わせている、そんな様子が結構面白かったのでした。だから、ああいった傾向の短編が並ぶのだとしたら、悪くなさそうだなという予想があったのです。そしてその予想はあたっていました。タイトルにセックスとあるように、たしかにセックスは扱われるのですけれど、でも別に性行為に至らないような回もあるし、やっぱり主眼は恋愛なんですね。それもちょっと不器用な恋愛で、そのまっすぐに進まないといった様子が、私に強く働きかけます。

まっすぐに進まない。そんな様子を見て面白いと感じるのは、それがただ読者をじらそうとしている、そういった類のものではないからでしょう。進めず、うろうろとしている。そうした状況をもって、登場人物たちはだんだんに露にされます。自分の思っていることがわからずにいる。わかっているつもりで、割り切ったつもりで、しかし蓋を開けたら全然そんなことはなかった。自分の思っていること、それがすっかり見透されていた。気付かないふりして、うまくのってくれていたんだって。そういったやり取りに、切なさがあり、諧謔があり、悲しさがあり、後悔も苦しさも、そして喜びもあって、そう、この感情の多様さがいい。不幸になると思った、そんな流れの果てにすごく仕合せそうな結末が用意されていたり、あるいはまま不幸に突き進む。この、どちらにも、きづきサトウ組らしさがあって、けどずいぶん優しい作風になったように思って、すごく面白かった。ええ、この人の短編はいいなって、あらためて思った、そんな一冊でした。

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