2010年2月8日月曜日

ちょー!えど幕末伝

 『ちょー!えど幕末伝』はおえどの漫画。幕府が400年続いた末の幕末の動乱を描いて、主人公は上さまのお庭番、琴乃。剣術が得意なお嬢さん。上さま警護が仕事のはずが、脱走癖のある上さまを追い掛けるのが本務のようになっていて、このあたりはわりとよくあるタイプのコメディといってよいんじゃないかと思います。そして、この漫画の売りですよ。ペリーをはじめとする主立った面々が女子であります。ぺるり、金髪の女の子。坂本竜馬も土方歳三も西郷隆盛も、みんな可愛い女の子にしてしまいました、ってな漫画であるのですね。

この漫画がはじまった当初は、正直どう読んだものだろうって思ったんでしたっけ。そりゃ琴乃は可愛い。ぺるりだって最高じゃないかって、けれど漫画としては結構むりやりっぽいなあ、なんて思っていたんです。緊迫感あるわけじゃない。それこそのんびりとしたテンポは読んでいて微笑ましいけれど、開国ならぬ結婚を迫るぺるりと、それを阻止しようとする琴乃の対立を描きながら、現代日本風幕末舞台で延々とコメディをやり続けるのかななんて思っていたんです。

それがどうも違うようだぞ。そう思いはじめたのは、生麦事件がきっかけでした。それ以前からも、倒幕を目論む高杉晋作、ああ、高杉は男です、高杉晋作が出てきたりして、穏健に持続する幕末ものじゃないっていうことはわかりつつあったのですけれど、ここに生麦事件という具体的な史実を持ち出してきて、関わりを持つ人物は大きく違ってるし、人死も出なかったりする、実に平和な事件ではあったのですが、これはもしかしたら今後竜馬、おおっと、リョーコ暗殺とかありうるのか? 上さまと倒幕派の衝突、薩長と新選組の死闘みたいな展開ありうるのか? 急に読んでるこちらの意識が変わったのですよ。歴史的事実をコメディタッチながらも追っていくのかも知れないなって。そう感じてからというもの、俄然面白みが増したのでした。

単行本で残念なのは、雑誌掲載時、欄外に掲載されていた歴史のおさらいコラム。取り上げられた事件についての、ちょっとした解説なんですけどね、それがなくなっちゃってましてね、おお、残念って思ったんです。記憶によれば、これも生麦事件からだったんじゃなかったかなあ。単に幕末オールスター四コマコメディじゃないと思わせた、それはこのコラムの影響もあったかも知れません。私の意識の流れとしては、生麦事件の回を読み始めて、おっ、と思って、それからコラムで、なぬっ、となった。ええ、やっぱり私にとってのターニングポイントは生麦事件であったのです。

後半、終わりに向かうにしたがって、だんだんにシリアスになるかと思えば、特にそういうわけでもなく、けれど倒幕ないしは開国の動きは無視できないくらいに大きくなって、そんな中、琴乃がひとり真面目に対応しようとする、そんなところ、面白くもあり、しかしちょっと心配でもあり。っていうのは、琴乃になにか含むところがあるっぽい、そんな風であったからなんですね。なんか深刻なことが起こったら怖いなあ、そんなこと思いながら読んでいた終盤、ついに明かされた琴乃の秘密。その意外さには素直に驚いたものだし、そして怖れていたような展開は — 、ありませんでした。穏当に、平和裡に開国のなった、そんなラストにはちょっとほっと安心して、一息ついて、やっぱりのんきな上さまに、そして健気で真面目な琴乃に、その変わらない様子にちょっと嬉しく思ったのでした。

女の子いっぱいの幕末コメディ。けれど、読んでみればのどかながらもそれらしく史実の流れ感じさせて、面白かったなって、そんな感想です。ナンセンスもいっぱいで、けれどそのおかげで人死もなければ戦争にもならず、しあわせな漫画でありました。だから、大好き。肩肘はらず、けれどきちんと読めて、楽しかった。ええ、とても楽しかったです。

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