先日、バーンスタインの『ミサ』を探していたところ、前から興味のあったものを見付けたといっていましたね。それは、シュッツの『クリスマス物語』。そう、まさに今クリスマスシーズンだから! というわけでもないのだけれど、でもクリスマスを目前とした時期だったからこそ、思い出して、そして手にとったのだろうと思います。
私がこの曲を知ったのは、So I've Heardという、音楽史をざっと概観させてくれるマルチメディアタイトルにて紹介されていたからなのですね。Bach and Before、古代、中世からルネサンス、バロックにいたるまでを扱って、そのまさに終盤に現れたシュッツの『クリスマス物語』、その鮮烈な印象に打たれて、美しいコーラス。singen singenと歌われる、ドイツ語の響きの硬質でしかし澄んでいる、その質感にさえ魅了されたのですね。
演奏はタヴァナー・コンソート&プレイヤーズ。指揮者はアンドリュー・パロット。残念ながらアルバムWeihnachtshistorieは絶版しているみたいだけれど、Amozon.comのMP3 Downsoadsでは買えるので、もしどうしてもパロットの盤が欲しかったら、これだなと思っています。
さて、私が買ったというのは、キングス・コンソートの盤です。どういう演奏であるか、まったくの前知識なしに買うと決めたのですが、まあキングス・コンソートなら間違いないだろうと。そして、帰って一番に聴いてみて、確かに間違いないなと思ったのでした。
とても美しい。響きはやわらかく、伴奏も非常にソフトで、個々の声部が繊細に紡がれて、耳に心地良いです。鳴り響きの見事さをではなく、透明感のあるハーモニーの美を追求しているのでしょう。奏者の息遣いさえも身近に感じられるような丁寧な演奏に、静かに語り掛けるような明瞭さを持った歌声が調和して、ああ、やっぱりこの時代の音楽はよい。ライナーノートを見れば、Aを415Hzに合わせて、これは古楽では珍しくないピッチですが、この現代のものよりも半音ほども低いピッチが、やわらかな響きを生んで、また中全音律が使われていることもありましょう。美しい響きに心もほぐされる思いです。
そして、ラストのコーラス、singen singenの響きは、パロット、タヴァナー・コンソートのものよりもずっと静かで、繊細で、この違いは面白い。タヴァナー・コンソートも古楽のグループだから、低いピッチ、古典調律でやってると思うのですけど、それでもこんなに違いが出てくるのですから面白いものだと思います。
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