私はもともとゲームは嫌いなたちではなくて、それこそRPGなら初代『ドラゴンクエスト』の洗礼を受けた世代でありまして、その後はあの偉大なる『Wizardry』に没頭するといった入れ込みよう。もちろんアクションゲームもやったし、シューティングもシミュレーションもアドベンチャーもレースゲームも、スポーツものまでも遊びました。
けれど、この数年はどうもゲームに遊び疲れたのか、さすがに新鮮な感覚を得られず遠ざかり気味でありました。こういうのを食傷というのでしょうか。本当に、もうおなかいっぱいという感じであったのです。
そこへあらわれたのが『ことばのパズル もじぴったん』。久々に出会った革新的タイトルに、私の衝撃はいかばかりであったか一口にいうことはできません。
『もじぴったん』のすごいところ!
- シンプルなルール
- 深いゲーム性
升目に、用意された文字のピースをはめ込んで、クリア条件を満たすのが目的です。ルールは、つながった文字がことばになってないといけないというだけ。こうしたわかりやすさに絶妙のバランスのよさが手伝って、もう何時間でも遊んでしまうような魅力があります。いや、魔力といってもいい。これはもうことばの魔法でありますよ。
『もじぴったん』の面白さが際立つのは、迫ってくるタイムリミットに焦りはじめるあの瞬間でしょう。偶然ことばができあがるのを狙って、手当たり次第にピースをおいて、まったく知らなかったようなことばが出てきて、うわあ、こんなのあるんだ! と驚く。驚きながら、次の置き場所を探して、また驚く。
私たちを取り巻くことばの世界は、本当にアメージングな面白さに満ちていると感じる、濃密な時間であります。
『もじぴったん』のよさは、まだまだありますよ。
子供と大人が対等に遊べる、実に貴重な数少ないゲームであると思います。子供の有利は、大人よりもはるかに柔らかな頭と発想力でしょう。対して大人は、生きてきた時間の長さ、— これまでに培ってきた語彙力と経験を武器とするのです。
けど、多分私はこのゲームは子供の方が強いと思う。だって、彼らのことばの世界は発展途上であり、どんどんと新しいことばを吸収していこうという最中なんですから。それこそ『もじぴったん』からも語彙を獲得して、次のチャンスに生かすことができる。ところが、私なんかは、こんな言葉あるんだあって驚くだけ驚いて、次の瞬間には忘れてるんですよ。正直なところを打ち明けますと、私は語彙数には自信を持っていたのです。ところが、そいつはただのうぬぼれに過ぎないと思い知らされました。だって、知らないことばなんて山ほど出てくるし、今まさに要求されていることばがちっとも思い浮かばず、タイムオーバー! きゃー、だめだめじゃん!
私の頭は、どうにもこうにも柔軟さを欠いているという話でありました。
私がこのゲームの存在を意識するようになったきっかけは、海藍さんの漫画『トリコロ』の扉でした。このゲームに興じる娘さんたちが描かれてて、そういえば『もじぴったん』って名前、聞いたことあるなあ。どんなゲームなんだろうとおぼろげに思って、その印象はしっかり意識のどこかにとどめ置かれたのでした。
そして決定打となったのは、野々原さんのサイトで見たもじくんのイラスト。もう、なんていったらいいの? めちゃくちゃ可愛いんだ。野々原さんの絵はもじくんにかぎらず可愛いんですが、死ぬほど可愛いんですが、その絵のコメントにこのゲームの『体験版』のURIが紹介されていまして、これでダブルノックアウト。休みの日にはうちから一歩もでない私が、町のゲーム屋さんまでいきましたものね。どれほどの衝撃であったかわかろうというものです。
加えていうと、『もじぴったん』の魅力はあのポップでキュートな音楽にもあると思います。もじぴったんうぇぶでは音楽のダウンロードも可能で、私はあの音楽を聴いて、これは買わないとと思い、ゲームを買った上にさんとらまで買ってしまうという入れ込みよう。ムックやノベルやOVAがでてなくて本当によかった……。
ともあれ、『もじぴったん』は最高のゲームであるといっていいと思います。最高です。
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