2005年6月9日木曜日

サイダースファンクラブ

 6月9日はロックの日! というわけで、こないだ買った『サイダースファンクラブ』の紹介だ。

ってこんなふうに書くと、なんだか熱いロック魂のこもった意欲作みたいな風に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、いえいえそうじゃないんです。『サイダースファンクラブ』は竹書房の四コマ誌に連載されている、女子スリーピースバンドが主役の四コマ漫画なんですが、なにしろ著者が小坂俊史ですから、音楽に真っ向に取り組んでいるというよりも、バンド活動からナンセンスな笑いを引きだしているという方がしっくりきます。けど、ナンセンス一色かといえば、そうじゃないというところもほのかに感じられて、だから、もしかしたら、ちょっと異色作なのかも知れません。

サイダースというのが主役三人のバンド名でして、ギター、ベース、ドラムというミニマム構成はそれぞれの果たすべき役割がおのずと大きくなるから、どうしても個性的にならざるを得なくて、小編成ならではという難しさと面白さが入り交じるのだと思います。そんな、ただでさえ個性的になりやすいスリーピースバンドを小坂俊史が扱うもんだから、もうどうしようもなく個性的になって、小坂俊史の味というのは、本気だかなんだかわからないナンセンスさにあふれたキャラクターの暴走っぷりだと思うんですが、そうした面白さはこの漫画にも生きています。

けど、それでも他の漫画とはちょっと感触が違うんですよね。なんというんでしょう。単発のネタをバンバン打ち出してくるようないつもの漫画とは違って、なにか長いスパンをかけて描こうとしているものがあるような気がする。いや、ストーリーをやろうというわけじゃないんです。なんというんでしょう。雰囲気なんです。サイダースのキャラクターは、ナンセンスな笑いを引きだすための機能というよりも、もっとなにか感情に触れる質感が感じられて、特にサイダースとライバル関係にあるウォルナッツとバニーズの三バンドがからんだときにその感触は強いと思えるんです。

『サイダースファンクラブ』の帯には応募券がついてまして、七百円の為替と送料を合わせて送ると、The ClicksによるCDがもらえるというキャンペーンが開催されています(七月末日締め切り)。なんかこういうキャンペーンも異色で、なんかいつもと違う感じがするというのは、漫画を取り巻くこうした状況も手伝っているのかも知れません。

けれど、多分漫画そのものに違いがあるのだと思っています。作者は、なにかこうしたバンドというものに、振り捨てられない感情みたいなのを持ってるんじゃないかなあと感じたのです、勝手な想像ですが。もしそれが本当なら、なにか絡みつく情が残ってしまっているような、あるいは思い切った振り回し方ができないといった感じは、あながちあってもおかしくないのかも知れません。

でも、これはきっと私のうがち過ぎ、考えすぎでしょう。私は私の音楽に対する屈折した感情を、勝手にサイダースに投影して、勝手に感傷的になっているんです。けれど私はこうした感傷は結構嫌いでなくて、だから私は、『サイダースファンクラブ』は小坂俊史の漫画の中で、特別に好きな感じがすると思うみたいです。

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