ツーさん(妻)とカーさん(夫)の、ラブラブだけどどことなく肩の力が抜けたところが嬉しい漫画で、この表紙のお姉さんがツーさん。いったいなにをしてるのかというと、じゃんけんでなにを出そうかと決めあぐねてるところで、裏表紙には同じくこれをやっているカーさんの後ろ姿が描かれております。
のんびり系夫婦漫画『つうかあ』を読んでいいなと思うのは、二人がいい感じに対等で、それも別に同権だとか同等だとか、そういったイデオロギーとかから抜けたところに暮らしているところであろうかと思っています。私は、どちらかといえば、思想色の強い男女同権論者ですが、本当はそんなのはつまらないと思っています。男がどうとか女がどうとか、どちらが偉いとかなにが甲斐性だとか、そんなの考えないでも暮らしていける、— お互いがお互いを必要として、お互いを頼みにして暮らしていけるような関係であるのがいいなあと思うんであります。
そういう点において、この漫画に出てくる主人公夫婦は理想的ですよ。一時期友達夫婦とかいう言葉が流行ったけれど(いや、友達親子だったっけ?)、ちょうどそんな感じに恋愛というよりも友達関係みたいな雰囲気が漂っていて、いや、もちろんそれでも夫婦であるので夫婦らしさもあるのですが、友達のようで恋人のようで、それでいてもちろん夫婦という、どこにも定まらない穏やかな自分たちらしさがあるのがいいなあ、と。
ま、このへんは私がいつもいってることの繰り返しでございますな。
思うにツーさんカーさん夫妻は、中性的カップルの行き着いた先なんではないかというような感じがありまして、旦那であるカーさんについては、作品中でも言及されてるように男っぽさには欠ける
という表現が実にしっかりくる。妻ツーさんに関しても、その少年っぽい風貌も手伝ってか、女臭さというのがなくって、すごく清冽な印象。私、いっつも思うんですが、少年っぽさの感じられる風貌の女性ってよいですよね。飾り気なく、質素あるいは地味で、さばさばした女性というのはすごく魅力的だと思います。
私は、自分自身がユニセクシャルだとよくいわれるからというわけでもないのでしょうが、どうにも濃い恋愛というのは好きませんで、もっと、こう、なんていうのかな、性やなんかはちょっとタンスにでもしまっておいて、普段はそういったことなしにいたい。隣同士に寄り添って、その人の温度と重さが感じられるというのが理想だと思っていて、もちろん他の花に寄り道してなんてのはなしで、そうさなあ、ただ穏やかに一緒にいたいだけなのですよ。
私がこんなだから、そうした理想をよくよく表現している『つうかあ』は、すごく気持ちよく読めて、このほのぼの夫婦のやくたいもない日常には、ついつい笑みを浮かべてしまいます。
事件らしい事件が起こっても、事件というにはささやかな出来事にも、もちろんなにも起こらなくたって、いつもと同じように夫婦向き合って、一緒に寄り添っていられたりしたらきっと素敵だろうと思います。
- 入江紀子『つうかあ』(YOUコミックス) 東京:集英社,1997年。
引用
- 入江紀子『つうかあ』(東京:集英社,1997年),160頁。
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