うおお、カバーはずしたら、いきなりの鈴子黒歴史ノートかいな。いや、この子の場合どうなんだ? 黒歴史で進行形? ほっ、よかった。卒業したらしい。自分の作った設定の世界、きっちり反省して、苦い経験を次にいかそうとしています。うん、成長したねえ、鈴子。中学校の3年間を、自分で作った設定に逃げ込んでやりすごした。ずっとぼっちだった女の子。友達らしい友達もできなくて、だから星垣臣美、この子がはじめてできたお友達だったというんですね。星垣臣美、自称宇宙人だそう。おお、ものすごい電波!? ええ、『こずみっしょん!』の開幕です。
導入にあたる第1巻、登場人物が順番に出てきて、それがどういう人であるか、少しずつわかっていく、その過程がもうたまらん面白さなのですよ。人付き合いが得意でないため、これまで友達とか全然いなかった真木鈴子。いわゆる中二病的設定作って、魔族のなんのといっていた中学時代を越えて、今まさに友達を作らんとする! そんな鈴子のはじめての友達、星垣臣美、ええ、宇宙人を自称する女の子。すごい電波だ、そう思いながらも、自分の昔を思って、その妄想も受け入れて友達として接しよう。そう思っていたのに、なんと本当に宇宙人だったっていうんですね。
この漫画の登場人物、みな実に面白い。不思議解明部、略して不解部の部長樺山奈央、オカルト大好き不思議大好き、けど霊感とかまったくなくて、不思議を前にしてもばんばん見逃がす残念美人。黒瀬ハナ子、バカなこといって暴走しがちな奈央をとめる常識人、霊だの宇宙人だの、馬鹿なことばっかりいってとたしなめるリアリスト。そして、嗚咽するシミに第2のリアリスト並河茜音先生。
皆、最初に与える印象と、もう一歩踏み込んでみてはじめてわかるその人の真実、その変化、転換が目覚しいのですよ。なんと、そういう人であったのか。フェイズが変化する、知る前と知った後で、全然印象が違ってしまう。最初は電波な人だと、宇宙人設定を満喫してる人だと思われていた臣美、それは鈴子だけでなく読み手にとっても同様で、本当に宇宙人なのか、臣美がただそういっているだけなのか、判然としないわけです。だからその時点では、痛い設定を振り回してる現役を、振り回していた子が自戒しながらも、唯一の友達だからと受け入れる、コミュニケーション苦手系友情ものみたいな味わいで読んでいたんです。けれど、満を持して明かされる臣美の真実。戸惑う鈴子。ええ、ここでフェイズが変わるんです。宇宙人ってほんとだったのか。鈴子にしては衝撃で、気持ちがついていかない。そんな鈴子が、葛藤を乗り越える、その場面は結構感動的で、そしてこの後、味わいが変わるんですね。宇宙の友達コメディになる。宇宙人の万能テクノロジー、それを前提とした話などが展開されるようになって、元ぼっちコメディじゃないのか! いや、変わらず元ぼっちコメディでもあるんだけどね!
最初はわかってなかった状況が、いろいろ明らかにされ見通しがよくなることで、味わいも広がっていく、その感覚が実に面白くて、そして多くを知ってしまった今、冒頭の印象は初見のそれとは大きく違っているんですね。読むことで変わる、読むほどに面白くなる、そうした類の漫画。何度でも読みたい、そうした感触が実によいです。
- 榛名まお『こずみっしょん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2012年。
- 以下続刊
0 件のコメント:
コメントを投稿