『まんがタイムきららMAX』2012年12月号、発売されました。表紙は『ご注文はうさぎですか?』、チノとココアがふたりでセッションですよ。ピアノを弾くココアに、サックスを構えようとストラップをなおしてるチノ。頭にはうさぎの耳、飛び交うシャンパンボトル。ちょっとゴージャスな雰囲気に、彼女らの可愛さがミスマッチ、けれど不思議と調和して素敵な表紙に仕上がっています。サックスはセルマーかな? あんなややこしいもの、細かく描くの大変そう。主管が裏焼きになってるとか、いろいろあるけど、そんなのは瑣末ごと、小柄なチノに大きく感じられるアルト、いいバランスで素敵です。
で、この表紙イラストからが本編にかかわってくるというのか。『ご注文はうさぎですか?』、扉絵がチロル風衣装でそれぞれ楽器を手にした5人、ええと千夜がフルート、リゼがヴァイオリン、チノがコンサーティナ、ココアがモンキータンバリンで、シャロはバグパイプですね。なんか中央のチノがちょっと慌ててて、それが絵に動きをもたらしているように感じてよいですよ。さて、なんで表紙のイラストが本編に関わるのかというと、ブルーマウンテン青山さんの小説、『うさぎになったバリスタ』の、ジャズやって喫茶店の経営難を救ったバーテンダーの息子、ええと、チノの父なんですが、なるほどあの渋いおじさま、そんなことなさってたのか。表紙のチノのサックス、これは父上に習ったもの、とかだったりするのかな。父上、かっこいいな。で、表紙のイラスト、背景にフィルムの模様がはいってるの、これも本編に繋がってて、映画を見にいく話なわけです、青山さんからもらったチケットで映画を見にいく。皆、それぞれの理由で寝不足だったり、雨に降られたり、寝てしまったり、可愛くていいですよ。観賞ポイントが皆違ってるとことか面白かったです。しかし、モデルになってる人や店が、ほんとすぐそばにいたりあったりするのに、気付いてないのがいいですよ。全部キリマンジャロです。ホットドッグ食べてるシャロ。寝てたこと抗議するチノ。もう、実によいわけです。
『いちごの入ったソーダ水』は、女子校の女子寮、世間知らずのお嬢様御代田こひめと姉御肌の花泉月。るながこひめのこと、かばったり慰めたりしてこひめにすっかり懐かれて、かと思えば舎弟からやたら百合マンガをすすめられてなんかいろいろ意識しちゃったりして、そんなふたりの友情もの。お互いにはじめての同い年の友達とか、すごくでこぼこな感じで、面白くなりそうです。これ百合に傾くのかな? と思わせて、いやこの作者のことだからきっとそう簡単には運ぶまい。どんな展開がくるのか、期待させられるわけです。
『ふわふわ科学』は、菌類や酵素の話でした。カホはシイタケ、嫌いなんだ。自分は平気だからよくわからないんだけど、シイタケ、嫌いな人って多いみたいですよね。キノコの構造、その性質。なるほど、有機物を無機物に分解するんだ。また菌類を利用して作られる発酵食品など、これまでの説明を受けて発酵食品を考えると、菌類が発酵過程で有機物を分解してくれることで、もとの素材より消化吸収しやすくなる、ってことなんでしょうね。これで最後にヨーグルトを作る、というか増やすって感じですが、手作りしようって話になるの、いいですね。説明とキッチンでできる実践というバランスが、生活の科学という感じで気にいっています。
『LSD — ろんぐすろーでぃすんたんす』、ほんと素晴しいな。ついに椿にタスキが渡った。と、この扉、なんてよいのだろう。LSDって気持ちいいっ! っていってたころの椿から、練習を重ね、走り込んできて、今のこのタスキを受けたシーン、これまでの椿の陸上に打ち込んできた、取り組んできた時間が凝縮されて、ちょっと感動したほどでした。今の椿は、それまでの椿、その延長に立って走っているんだ。浅見さんのいった、きっと抜かれてしまう椿、けれど、椿は椿の積み重ねた時間、練習、経験、それで戦うしかないんだ。絶対に奇跡なんて起きない展開、抜かれて抜かれて、また抜かされて、恥ずかしい、つらい、けれどそれでも自分のペースで、自分のベストを目指して走るんだ。健気さに、ストイックさに、胸を打たれますね。そして勝ち取った目標タイムから11秒縮めたというその結果。なんという清々しさ、また晴れ晴れとした椿の表情も素晴しい。部としての成績といえば、健闘とはいえ、アクシデント含み、最高とはいえなかったのかも知れませんね。けど、タスキを繋いで、皆の気持ちもまた近くなって、舞と椿のやりとり、ああ、友情ですね。青春ですよ。部員に、友人に恵まれて、まっすぐに伸びやかな椿の走り、その成長。また、家族に愛されてる、その様子も暖かで、気恥ずかしさも嬉しさもないまぜに、しっかり椿を支える力になってる。スポーツもので、部活もので、青春もので、友情もので、そして家族の愛情も! 豊かな漫画であります。贅沢な漫画であります。
『Pretty Prison』、なかなかよい感じではありませんか。看守と囚人ものって、シチュエーション・コメディですよね。囚人に恋する看守という不思議な関係性。本来優位な立場である看守だけど、むしろ看守コハクは囚人リンネに対し弱い位置にある。それを立場の優位でもって誤魔化しながら、ことあるごとに絡みにいくというコミカルさ。悪くないと思いますよ。シリアスはまずもって期待できない。ナンセンスが身上。リンネへの好意と看守という仕事に対する真面目さがちぐはぐで、しょっちゅうコンフリクトさせているコハクが、いまいち行動意図が不明な所長にやたら振り回されたりと、そのどたばたぶりが面白いです。所長、看守、囚人というそれぞれが、本来の役割から逸脱していて、是正しようとするコハクにしても逸脱者だから、もうほんとあちこちがたがたで、そのポンコツぶりがよいのですよ。
- 『まんがタイムきららMAX』第9巻第12号(2012年12月号)
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