アニメ『夏目友人帳 参』、これがおすすめといわれて、見れば確かに素晴しい。しみじみと伝わってくる心情、その豊かさ、ささやかなしあわせを大切にしようというかのような夏目の思いは、静かながらも強く心を揺さぶって、ほんと、教えてもらえてよかった。知らずにいたら、人生の楽しみにおける損失だった、そう思うほどです。さて、『夏目友人帳 参』見てましたら、『蛍火の杜へ』のCMが流されてまして、ふーん、興味あるかな? そんな風に思っていた。けど、今は見にいきたいな、そう思っていて、それは原作を読んだから、なのですね。
今日書店にいったら、愛蔵版というのが出ていたのでした。これは、どうしよう。ちょっと考えて、買ってみた。それは、映画への興味もあったのだけれど、同時にこの人の描く漫画、それはどういう感じなのだろうと思ったから。これが大きいように思います。私が知っている緑川ゆきは、あくまでもアニメの『夏目友人帳』でしかなくて、実際のこの人の手になるものを見たことはまったくない。『夏目友人帳』は現在12巻刊行されていて、今から買うにはちょっと気力が必要。ええ、1巻で完結する『蛍火の杜へ』は都合がよかったのですね。続刊がない。短編。手軽に買えて、手軽に読める。雰囲気を知るには最適と思われたのでした。
アニメはしみじみと語られる散文の物語、対して原作、漫画は詩のようであるな。淡く綴られる心象の風景。コミカルな描写もあれど、時に挿入されるモノローグ、それはしたたかに心を打って、かすかに痕を残して消える。描かれるものは、物語の起伏であるというよりも、思い、感情、気持ちの継続していく、その流れであると思われて、ゆえにその気持ちの心にそっと秘められつつも、いつか思いをあらわにせねばおられないまでに大きく動いてしまう。その明かされる瞬間の、閃くような眩しさは、幸福であり、悲愴であり、もう言葉などいらぬよな。そう思わされるほどの充実で、しかしその鮮烈を受けて静けさに返す、そうした言葉もまたしなやかに息衝いているのでした。
私は、これほどまでに強く人を思ったことがあろうか、そう思わされる物語でした。そしてこれが、アニメとなって、また違った表現手法で語られるとなれば、どのような世界を見せてくれるだろうか。見たい、それを知りたい。そうした気持ちがとどまらないのです。
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