2011年5月1日日曜日

もっかい!

 この漫画の第一回を見た時には、なんかこれすごいぞ、そう思ったものでしたっけね。絵柄の持つ雰囲気があまりに独特で、普通ならトーンあたりで処理しそうなところが、なんとハッチング、とはちょっと違うかな? 制服の襟とかがですね、カケアミではないんだけど、そんな風に表現されてまして、うわ、なんだか目がちかちかするよ! けど、なんか面白そう、そう思わせるものが確かにありまして、一発で気にいったのでした。ええ、最初は絵と雰囲気、そこにひかれたというのですね。

でも、ほどなくして内容にもがっちり引き込まれまして、優等生の衛と問題児の遊、ふたりの毎日のどたばた生活、それが面白くてですね、どんなことでも遊びの種にしようとする遊、新しい競技を考案して、それで問題おこして、先生に怒られて、みたいなパターンなのですが、いやあ、一味違えてきましたよね。遊のフォローばかりしている衛、そう思っていた、そういう見方がそもそもの早とちりだったんですよ。衛は確かにいい子で、常識的に振る舞う人であるのですけど、なんでもかんでも優秀なわけじゃなくて、優秀なのは体を使ったこと、運動とか競技ですね、ほぼそのあたりに限定されていて、じゃああとはというと、成績はあんまりよくないし、朝も起きられなかったりするしと、無条件にいい子ってわけじゃないんです。

じゃあ、遊はどうなのか。ええ、無条件に悪い子、問題児というわけじゃないんです。負けず嫌い、アイデアの王様、あんまり体が強いわけでもないのに妙にタフだったりして、そして意外にもすごく成績がいい。どうも根が真面目にできてるみたいで、できないことがあったら、ちゃんとできるように、なんどでも基礎からやる、そんな性格みたいなんですね。そうしたところ、あちこちに描かれていたんですが、一番わかりやすく描かれたのって、あの逆上がりの回でしたね。先生はむしろ懲罰的な気持ちで居残りを命じたのに、遊ちゃんものすごいやる気で、まず初日に先生を潰す。そして翌日、衛を潰す。あれは素晴しかった。遊ちゃんという人が、一体どういう人なのか。ものすごくよくわかる話でした。またその途中に描かれた、衛と遊の関係が誤解されるみたいなエピソードなんかもすごくおかしくて、いやもう大好きでしたね。

この漫画が好きな理由、それはなにより読んでいて楽しかった、ついつい引き込まれてしまう魅力があったからなのですが、それだけでなく、衛と遊の関係、それが本当に素敵だったというのも大きいのですね。身体能力に関しては天才的な冴えを見せる衛。けれどそれが常にいい結果を出すわけでなく、むしろやっかまれたり、嫌なことも少なくなかった。そうした思い出が衛の気持ちを縛ってたりもしたんですよね。けど、遊を相手にする時だけ、気兼ねなしに思いっきり遊べる。ぱっと見には、遊に迷惑かけられてばかりいる、そんな風に見える衛ですが、本当、彼女らは持ちつ持たれつなんだなって。互いに替えのきかない、そんな関係。実にベストフレンドというしかない、そんなふたりなんですね。普段は、仲良くにぎやかに騒いでる、そうした姿に、決して大げさにならない、そんな友情が沁み透っている。ええ、そうしたところがすごくよいなと思っていたのでした。

  • 4224『もっかい!』(まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2011年。

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