2011年2月8日火曜日

教師諸君!!

 『教師諸君!!』の単行本が出ましたよ。『まんがタイムファミリー』にて連載されている、教師が主役の学園もの。主役、西名先生は世界史が専門で、しかし注目すべきはその格好でしょう。サリバン先生風。私は服飾史にはうといのですが、19世紀アメリカにおける婦人といえば、こうした衣装が一般的だったのでしょうか。オルコットの『若草物語』なんかも、ああした印象ありますよね。と、こういった具合に、歴史をはじめとする社会科の小ネタの飛び出してくる漫画でありまして、西名先生コスプレがあれば石窯コレクションなんてのも面白いのですね。けど、ただそうした小ネタが楽しいだけの漫画ではないというところが重要で、教師たちの趣味嗜好が前面に押し出されるところなども面白く、またそうした教師たちのいる職場の風景、それが楽しそうでならないのです。

主役は西名先生、であるのですが、狂言回しとでもいいましょうか、話を動かしていくのはむしろ新任の深沢先生だったりします。日本史の教師、産休の代理としてやってきて、その後正規の教員になるのですが、ちょっといろいろ夢見がちというか、自信過剰というか、けどやっぱり教師としてもまだまだいたらず、加えて変わり者の西名先生や、西名先生と一緒になんやかややってる生物の笛田先生、このふたりですよね、趣味性を前面に押し出してる教師の代表格、彼女らにちょっとたじたじとなっていて、まあそうした点でもいたらないわけです。けれど深沢先生のそんなところが描かれることで、西名先生をはじめとする先輩教師たちの変わり者でありながらエネルギーのあふれているところが強調されている、そんな気がするのです。

しかし、この漫画、うまくキャラクターが生きてるなって思います。考えてみればですよ、コスプレで授業する西名先生とか、ものすごく漫画的なキャラクターで、非現実的であるわけです。けれど、こんなに非現実的なキャラクターなのに、どことなく身近とも感じられる、そんなところがありまして、それはこの漫画の登場人物たちの感情の動きなど、もろもろの描かれかたが自然であり、またうまいからなんだと思うのですね。好きなもの、好きなことに一生懸命な、それこそ常識はずれな人たちでありながらも、仕事となれば常識的あるいは妥当な、それこそ普通のコメントが出てくる。ああ、この人たちは精一杯に楽しみながらも、よき教師たらんとしてるんだな、そんな気がします。いや、テストの問題作るのに四苦八苦して、もう駄目だあってなったりもしてるんですけど、でもそういう苦手が描かれるところなど、また親しみを感じる要素であるのでしょう。

私、この漫画を見ると、教師というのも面白そうだなって思ってしまうんです。実際の話、正規教員ともなれば、残業月80時間とかいう過激な話も聞く昨今、おいそれと教員など憧れちゃいけねえな、そんな気もするんですけど、でも自分の好きで選んで学んだことを職業にできる。知識を伝え、また自分自身学ぶこともできる。ええ、この漫画に描かれる教員たちの仕事の風景は、すごく楽しそうで、ちょっと憧れてしまう、そういった雰囲気がすごくよいのですね。ある意味、理想なのかも知れない、そんな風に思ったりもするけれど、自分の好きなことを深め、人に伝えるというのは、すごく魅力的。加えて、登場人物が皆チャーミング。これで面白くないわけがない、なんて思うのです。

  • 駒倉葛尾『教師諸君!!』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2011年。
  • 以下続刊

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