2010年9月7日火曜日

『まんがタイム』2010年10月号

『まんがタイム』2010年10月号、発売されました。表紙のテーマは、食欲の秋ですね。いや、収穫なのか? 『おとぼけ課長』は梨、『みそララ』は栗、『だって愛してる』は葡萄で、『天然☆無農薬一家』はさつま芋です。この表紙に出てきた中では、梨が好きですね。あのしゃりしゃりした食感、それから独特の香味、甘味。ああ、こういうの書くと、梨、食べたくなってしまいますね。

『川辺のぼっち』、創刊30年目スペシャルゲストです。作者は旋川ユウキ。名前だけは知っていたのだけど、読むのはこれがはじめてです。主人公はニホンカワウソ。最後の一頭。自分が死んだら種が絶滅する。その絶滅寸前という状況や、仲間がほかにいないという、ちょっと切ない気持ちを扱ったひとり語り。爆笑をさそうギャグ、というような風はなく、むしろ淡々として静かなおかしみの沸き起こるのを待つ? そうした印象のある漫画でした。これは長く読んで、触れて、慣れて、親しめば、なにかもっと違った感想が出てくるんじゃないかなあ。そんな風に思わせるものがありました。

はこいり良品』。「読んではいけない本」フェア。ああ、こういう批判的タイトル、多いですよね。でも、書店古書店なら、読んではいけないという前に、なんらかの前提がないことには逆効果になりそうで、じゃあどんな前提がいいんだろう。怪奇ものなら、夜ひとりで読んではいけないとか、あるいは大人になるまで読んではいけないっていうジャンルもありそう。そうした発想ひき出してくれる、なかなかに刺激的な一本目でありました。

そして、電子書籍への言及。電子書籍が一般的になったら、古書はそれこそ希覯本であるとか電子化されなさそうな本、あるいは冊子体を愛するマニアのための店になるのかなあ。安く読みたいという人があるかぎり、古書店は存続しそうな気もしますが、新刊はどうなる? 当分冊子の本はなくならないでしょうけれど、そう遠くなく大きな変化に直面せざるをえない、そんな業界であるのだろうなあ。など、いろいろ感じるところあったのでした。

すいーとるーむ?』、台風の日の出来事。水浸しの永井くん。そして水浸しの秋さん。いつもちょっと色気のある、そんな雰囲気の漫画ですけれど、今回はことさらでした。秋さんの秘密。ばれるんじゃないか、ばれたんじゃないか、気付いてやがるんじゃないか、ていうか見てないだろうなお前。気持ち、感情がくるくる変わるその様が彼女の魅力ひきだしつつ、漫画としても面白い。けど、そうしたちょっと色っぽいのだけじゃなくて、基本に辛辣な視線があるのがいいなって。この作者の味だと思ってるんですが、秋さんの出社の理由や社長の方針、実にいい味でありました。

『マチルダ! — 異文化交流記』、マチルダ帰国。ひとりでいると、部屋が広く感じるよ。って、本当に広くなってるし! お別れした後の定型ともいえる台詞、状況描いて見せて、それ全然気のせいじゃないよって逆転してみせる。『マチルダ!』は確かにこうした手口で見せる漫画だったけれど、冒頭の一本は見事にやられてしまいました。今回は、マチルダのいたころをあやに振り返らせながら、徹底して感傷にひたらせない。ちょっと可哀そうな気もするけど、でもこれがこの漫画のらしさなんでしょう。最後に、マチルダが帰ってくるよって展開になって、ああまだ続くのか。これは私にとっても嬉しい便りでありました。

  • 『まんがタイム』第30巻第10号(2010年10月号)

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