『数学女子』は、理学部数学科にて数学を学ぶ内山まなと友人の女子3人、彼女らの大学生活を描いた漫画であります。でもって私、この漫画のこと、まったく知らずにおりまして、けどどうしても手にとらないではおられませんでした。表紙買い? いえ、いうならばテーマ買い。日本では、女子は理系学問が苦手という偏見があるために、理系進路を選択する女子の割り合いが他国に比べて目立って低い、なんていわれています。この漫画は、そうした理系女子にスポットライトを当てている。女子にとって数学科とはいかなる世界であるのか? それだけで興味がわいたのですね。
まあ、理系の女性が好きだっていう理由もあるのかも知れませんけどね。というのはどうでもいい話。K大学理学部数学科の女子4名、内山まな、坂崎ゆみ、酒井とも、渕上さえこ、それぞれに個性的な女の子たちであります。数学科なのに数学苦手であるとか、ミステリー好きが高じて暗号に興味が向かっちゃったとか、確率駆使してギャンブルに挑戦するだとか、そういった基本の性格もなかなかにいいのですが、日常の出来事として描かれることが面白いのですね。目にした数字をすべて計算してしまわないでは気がすまない。ものごとを統計的に判断する癖がある。ケーキを四分割するのにシビアに面積計算しはじめるかと思えば、素数やフィボナッチ数など数に対してのフェティシズムが見え隠れする。こうしたもろもろが彼女らの個性を彩りつつ、その存在の確からしさを後押ししていると感じられるのですね。
作者自身が数学科に在籍されている、のでしょうか? ヒロインたちにもモデルがある? いえね、男性に向ける視線であるとか、女性としての自分に対する見方に生々しさ、実にリアルと感じさせる感触がありまして、だんだん見た目に気を使わなくなってる! なんとかしないと、合コンするぞ! とか、うちの科の男性、アベレージ低っ! それから、こういうタイプはちょっと、かといってこういうタイプも苦手、などなど、男性の望むように作り上げられたヒロインではなく、自然な女子としての存在感がにじみ出ていると思ったんですね。男性にとってはあんまり優しくないところもある。けれど、それでも嫌な子たちではなくて、各人各様に魅力的で、みな数学を、学生生活を楽しんでいるなあ。そう思えるところが実によかったんですね。
数学科4人だけの女子。だからか、みんなすごく仲がよくて、そしてなんのかんのいっても真面目で頑張り屋。素直に読んで、そのまま応援したくなる。そんな子たちであるのですね。また、ちょっと知らない数学科のこと、よく知らない数学のこと、ちょっとずつ知ることのできるという、そうしたところもすごくいいなと思える漫画でありました。
- 安田まさえ『数学女子』第1巻 (バンブー・コミックス) 東京:竹書房,2010年。
- 以下続刊
2 件のコメント:
あまりにも久しぶり過ぎてあれですが
「数学ガール」もおすすめです。
※値段が高いのが難点ですが一気に読めます。
『数学ガール』は評判がいいですね。ずっと前に知ったのですが、読んでわからんのじゃないかなあという心配があって、なかなか手を出せずにいたのですが、そうか、ちょっと読んでみようかなって気になってきました。
調べれば、シリーズになってるんですね。まずはコミック版で様子を見ようかな、と思ったら、コミック版賛否あるみたいで、いやあ、やっぱ原作からがよさそうですね。
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