2008年7月21日月曜日

ペン習字三体

万年筆を買ったのがきっかけになったのだと思います。身にそぐわない立派な道具を手にして、だったら道具に負けないよう努力すればいいじゃないかと逆転の発想。その行き着いた先というのが、日本の誇る筆記具メーカーであるPILOTが実施するペン習字通信講座であったというのは、以前にもいっていた話です。狙ったとおりに四月入会を果たした私は、毎日毎日コンスタントに練習できるわけではないけど、ちびちびちまちまと稽古して、毎月末には課題を仕上げるという、そんな手習いをしていまして、本当はもっとちゃんと毎日やったほうがいいんだろうなあって思うんですが、さすがに体がもちません。だから、できる範囲でゆっくりと少しずつうまくなろうと思っています。なにごとも焦らないのが一番です。

さて、PILOTのペン習字講座は、AからDまでの四種の系統から好みの書き振りの手本を選べるようになっているのですが、これが一度決めたら変更するんじゃないですよって、練習の効率落ちるからねって、そんな話でありますから、もうはじめる時にはどれを選んだものか、迷って迷って、ぎりぎりまで迷ったものでした。いやね、わかんないんですよ、単純に。手持ちの資料はPILOTのテキストだけ、でもそれだけじゃどうにも決め手にかけて、だってテキスト収録の入門と上級で、全然といっていいくらい書き振りもなにも違って見えるから、この系統はこういう感じということさえつかめない。でも決めないでは先に進めないから、最後には思い切ってB系統、故・鷹見芝香先生流派、高田香雪先生の流れに連なると決心しました。

決心したら後ははやいですよ。ペン字いんすとーるというペン習字に取り組んでいらっしゃる方のサイトがあるのですが、そちらに2ちゃんねるペン習字スレッドのテンプレートが置かれていまして、なんとそこにはPILOTペン習字講座の参考図書がまとめられています。PILOTでは系統を選べるかわりに、詳細なテキストは各自用意されたしというスタンスであるらしく、というか、テキストを用意しないと毎月の課題をこなせません。月替わりの課題は活字にて提示されるから、ペン字のお手本を持っていないと取っ掛かりさえない、そんなことにもなって、だから課題の載る『わかくさ通信』にも各系統ごとの推薦書が紹介されています。そして我がB系統のお手本が『ペン習字三体』であるのです。

これがどういう本であるか、タイトルが示していますね。ペン字による三体、すなわち楷書、行書、草書が収録されている、そういうお手本です。まずは常用漢字、そして人名漢字の手本が示され、これで万全とはさすがにいきませんが、普通の用には充分でしょう。巻末には旧字異体字がフォローされて、実際これだけあれば普通の手習いには困らなそうです。仮に常用範囲外の文字を書くことがあったとしても、偏や旁をそれぞれ手本から見つけ出して組み合わせるという手もありますから、なんとかなるかなというのが実感。少なくとも、今やっている講座では、これで問題が出ないように課題が作られているから、問題なく進めることができそうです。

今、私の習っているのは楷書でありますから、それぞれの文字に示された行書草書の三文字には目を向ける余裕がなく、けれど最後にはこれらも習うのでしょう。その日が楽しみです。とはいえ、いったいそれまでにどれくらいの年月が費やされるか。もしやすると割れた背からページの抜けが出たりするかもなあ。割と堅牢に作られてるとは思いますが、どうしても開ききらないでは使いにくいものでありますから、壊れること前提のものとして使ったほうがよいのだと思っています。しかしそれでも数年はもつでしょう。だったら、使って使って、壊れたら買い替えて、それくらいの気持ちで取り組んだほうがいっそいいのかも知れません。

あ、そうそう。ペン習字の進度についても書いておきます。四五六月の級位認定課題を終えた時点で8級Bに認定されています。これが早いか遅いかはわかりません。今は以前習っていた毛筆の遺産があるから楽だけど、もう少ししたらどんどん大変になっていくんだろうなあという予感がされて、だからいずれ上り坂が急勾配に入ろう頃に慌てることのないよう、基礎の今をしっかり習っておかないといけないのだと思います。うん、がんばろう。ともすれば気を抜いてしまいがちだけど、そういうことのないように気をつけたいと思います。

  • 高田香雪,大久保節子,長尾敏子,宮崎倫子『ペン習字三体』東京:日本習字普及協会,1994年。

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