2008年7月11日金曜日

幼稚の園

 『幼稚の園』は小坂俊史の新作で、四歳児ながら年長組に編入された微妙な幼稚園児、一条ルルが主人公。けど、年長組っていくつなのさ、ええと、六歳だそうです。うん、確かに微妙。でも、子供の一年って大きいから、実際にはかなりの早熟なんでしょうね。って、先生相手に小憎らしいこといってるルルを見ていると、それが到底六歳児相当には見えません。つうか、あんたいったいいくつなんだ。小学生だってそんなのいないだろ、ってひねぶりで、このへんはさすが小坂俊史だと嬉しくなる味わいです。思わずにやりとさせられる、けどこんな子供いやだな。心の底からそう思わされて、けどそんな子供になんのかんのいいながら付きあっているめぐみ先生。ほんと、見上げた人だと思います。というか、この人が突っ込み役か。ある意味、この人がいないと成立しないという、重要な役どころでありますか。

小坂俊史の漫画に出てくる人は、とにもかくにもろくでなしという印象を持っているのですが、さすがにこれは主人公が子供だから、おおっぴらにろくでなしという人は出てこなくて、けどどうやらルルの両親はそこそころくでなしっぽくて、やっぱり小坂俊史というとろくでなしを描く人だという印象を強めることとなりました。とはいっても、そのろくでなしというのが、本当の意味でのろくでなしで、憎々しげなる悪漢ってことはないんですね。大抵は愛すべき人たちで、なんかたがが緩んでいるというか、あるいは最初からたががはまっていないというか、豪快で豪放で、こんなの身近にいるときっと迷惑だろうなあと思うんだけど、なんか見ているとすごく楽しそうで — 。

『幼稚の園』は、さすがにそういう感じは薄くて、だから私としては物足りなかったという気持ちもないではないのです。やっぱり主役が子供ですからね。ろくでなしの幼稚園児っていったいどんななんだという気もしますし、だからといって教師をろくでなしにすればすごく難儀なことになりそうだし。印象としては、突き抜けない、はっちゃけない、そういうものにとどまって、かわりに台詞運びを中心とした皮肉やナンセンスなおかしみが押し出されている、そんな感じに仕上がっています。人によってはおとなしすぎると思うかも。けど、私にはおとなしいながらも面白かった。なんかいい感じになってきたかと思うと、微妙な台無し感で締められるという、その報われなさというかなんというかが好きだったように思います。

  • 小坂俊史『幼稚の園』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。

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