そもそもなんでこの漫画を買おうと思ったのか、それがわかりません。だいたいタイトルがタイトルで、『ロリコンフェニックス』。もう、どうしようもない。しかし、タイトルだけならまだしも、中身も結構な台無し感漂うものでありまして、変態大決戦? 半裸、サスペンダー、ゴクラクチョウの覆面で武装(?)した主人公フェニックスが、少女を狙う悪漢、BL団を相手に大立ち回りするという、まさしく正義のヒーローものである、みたいなんですが、どう見ても変態大決戦でしかないという切なさ。というか、あからさまに同類ですから……。フェニックスそしてBL団ともに彼岸にあって、わずかに立ち位置を異にしているだけといった塩梅のこの漫画。それがもう見事にばかばかしくて、しかしそのばかばかしさが面白さの肝でしょう。とはいいますが、あんまり人に勧めて、同意もらえる面白さではないかも知れません。明らかに人を選ぶ、それが『ロリコンフェニックス』です。
私には結構面白かったんですよ。世の中にはね、脳内を火花散らせて情報が駆け巡り、ぶつかり、繋がる、そんな面白さもありますけれど、またその逆の、いったいなにがなんだかわからんといったような、くだらなさこそが命みたいな面白さもあるわけで、『ロリコンフェニックス』はまさしくその後者であります。だいたいがいい加減な漫画です。敵の組織にしたって、そういう組織だっていってるだけで、バックグラウンドがこれと描かれるわけでないし、そもそも主人公が26歳ニートだっていうところからして、なんか脱力気味というか、夢がありません。けどそうした逆境に立ち向かうでもなく、むしろ開き直って、自分の好きなもの(少女ですが)に邁進し、自分の愛する世界を守ろうと日夜努力する、そんなフェニックスの生き様は、 — ごめん、どうやっても褒めにくいです。少なくとも参考にしたり真似したりするようなもんじゃあないよなあ。でも、やり方や戦い方を除外すれば、町田市の少女の平和を守ろうと奮闘するということ自体はいいことなのかも知れない。もし打ち込むものが少女云々でなければ、もっと賞讃される、名実とものヒーローになれたのかも知れない。
とかなんかいってもなあ。正直、ちっともわかりません。
やっぱりこの漫画は、どう言い繕っても同類、変態同士が低レベルな戦いを懸命に繰り広げるという、そこに楽しみがあるんです。理屈やらなんやらはどうでもいい。ターゲットになっている少女、渡部未亜にとってはどっちもどっちの迷惑さであることは間違いなく、けど、一応守っているという大義名分があるだけでも、フェニックスに分があるのか? あったとしても、ごくわずかな差に過ぎないよなあ。と、脱力しつつ、けど思い掛けない変態性の発露に笑わされてしまって、面白いんだか悔しいんだか。不思議なテイストにあふれた漫画です。
ただ、思うんだけど、この漫画を読んで楽しめるという人は、やっぱりちょっと彼岸に足を踏み入れてるんじゃないかなと、そんな気がします。
- 松林悟『ロリコンフェニックス』第1巻 (角川コミックス ドラゴンJr.) 東京:富士見書房,2007年。
- 松林悟『ロリコンフェニックス』第2巻 (角川コミックス ドラゴンJr.) 東京:富士見書房,2007年。
- 松林悟『ロリコンフェニックス』第3巻 (角川コミックス ドラゴンJr.) 東京:富士見書房,2008年。
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