2006年1月31日火曜日

あの素晴らしい愛をもう一度

  七十年代、日本中に吹き荒れたフォークムーブメントを懐古しようとすると、どうしても欠くことのできない曲というのがあるようなんですね。もちろん、人によって違うと思います。好みというのは人それぞれ千差万別で、思い出思い入れも各人各様なのですから。ですが、七十年代フォークの代表といえる一曲があるようなんです。それは『あの素晴らしい愛をもう一度』。NHK趣味百科『アコースティックギター入門』の冒頭を飾った曲であり、同じくNHKのギター入門『あの素晴らしいフォークをもう一度』では、七十年代フォークの雰囲気を喚起させるキーワードとしてタイトルにも盛り込まれています。タイトルに盛り込まれたといえば、あのイタチョコシステムの『あの素晴らしい弁当を2度3度』を忘れるわけにはいかないでしょう!

つい数年前からGSやフォーク時代の曲がカバーされたりしてきましたが、『あの素晴らしい愛をもう一度』は、そういった流行が起こる前から綿々と取り上げられてきて、だから曲名でもって検索してみると、いろいろな人によって歌われたバージョンを見つけることができると思います。この曲がどれほど愛されているかということの証拠になると思うのですが、でも実をいうと、私はこの歌結構苦手でした。

学校の教科書に収録されていたんですね。私が学生だった頃にはすでに、教科書にポップスが載っていたのですが、そうしたなかの一曲に『あの素晴らしい愛をもう一度』があったのでした。

私は、教科書に載ってる歌を、ピアノでコード押さえながら歌うというのが好きだったものですから、この曲も一通り歌っているんですが、どうもなにか健全な感じがしましてね、だから苦手でした。私が好きな歌というのはだいたい決まっていて、えーと、暗い歌? オフコースの『さよなら』とか、好きでよく歌っていましたね。私の嗜好はこんなもんだから、長調で歌われるこの曲が苦手に感じたのも当然だったのでしょう。ですが、その後歌詞をちゃんと読んでみて、がらりと印象が変わってしまいました。以前はあんなに通いあっていた心が、この思いは永遠とまで思っていたというのに、今はもう通わない。曲調の明るさに隠されている分、悲しさが余計につらく響きました。心変わりというテーマを自分のものと引きつけられるようになったのか、確かに若いころは一途で向こう見ずで、だからこの歌の向こう側に思いが向かわなかったのもしかたなかったのかも知れません。ですが、年をとって、ようやく心変わりの悲しさを感じ取れるようになった。若い頃にはわからないこともあるのだと思ったものでした。

デアゴスティーニが『青春のうた』創刊号の第一曲目にこの曲をおいたのも、うなずけるというものです。

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