もう一昔前といっちゃっていいのかな。かつて空前の、といってもいいくらいに格闘ゲームが流行したことがありましたが、あの頃にはお遊びで漫画やノベルの登場人物紹介にコマンド表がついていることも珍しくありませんでした。私は結構格闘ゲームが好きだったものですから、そういうのを見るたびに、これらが本当のことであったらきっと楽しいだろうなと思って、実現しないことを残念がっていたりもしたのでした。
その当時からすでに同人の格闘ゲームは存在していて、私はそういうものを見るたびに、自分にも技術があればいいのにと悔しい思いをしたものでした。最近でもそうです。『帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?』の表紙カバーをとると、主人公クリスの固有技表があらわれて、こういうのを現実のものとできないのが悔しいなあと思いました。ええ、最近も最近、昨年九月のことですよ。
でも、そういう悔しさというのもちょっとだけのことで、しばらくすれば忘れちゃうようなもんなのですが、今回は少しばかり違いましたね。ほら、『行殺!スピリッツ』ですよ。先日もいいましたが、私はこのゲームを一通り遊んでみて、そのできに感心してしまって、ああ楽しいなあ、こんなのが作れるというのはいいなあとうらやんでしまったんですね。
中でも悪かったのが永倉です。いや、永倉新が悪いってんじゃないですよ。悪かったのは彼女の武器でして、ええと、大木槌なんですよ。これがうまいこと『帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?』のヒロインクリスの得物にかぶっていて、クリスの使う武器というのは攻城用の大金槌なんですね。だから私は永倉新を見て、使ってみて、クリスの固有技はゲームにおいて再現可能だという思いを強めてしまった。ああ、技術さえあれば実現可能なんだと知った。ですが、私には技術がないのです。ええ、ええ、技術がないんですよ!
同人に極めて近いところにまで寄りながら、私が同人に作り手として参加することがないのは、結局は技術の問題なのだとわかります。ゲームは作れない、絵は描けない、漫画はネタが練れない。けど、作りたいと思う気持ちだけはあるもんだから、彼らの気持ちはわかります。それはひとえに、作品への、あるいは登場人物への愛です。ええ、ええ、愛なのです!
ああ、もし私に技術があったらば、クリスをPC上で動かしてみせるというのに! 帝立第13軍学校を、そのわずかの部分にすぎないにせよ、かたちにしてみせるというのに!
余談
本当の愛は、ない技術をもって制作に飛び込ませ、技術を会得しつつ完成に達するものであると思います。ああ、私には愛が足りない!
- 石田あきら『帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?』(まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
- 以下続刊
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