図らずも、三夜続いて機械の身体を持った美少女ものを扱うはめになってしまいました。本日ご紹介しますのは、ご存知あさりよしとお。『まんがサイエンス』や『HAL』にて知られた人気漫画家で、代表作はというと『宇宙家族カールビンソン』に『 ワッハマン』。今、『アフタヌーン』にて連載されている『るくるく』も人気です。
そんな人気作家あさりよしとおのお送りする『荒野の蒸気娘』。機械の身体を持った美少女姉妹の物語で、私は始めこのタイトルを聞いたときには、西部開拓時代のテイストに元気いっぱいの、そうさな、『るくるく』でいうところの数みたいな娘が大活躍するどたばたコメディかと思っていたのですが、実際手にしてみたらそうじゃなかった。少女たちのテイストはむしろイギリス風。りりしくしっかり者の姉アンに、花や動物を愛する心優しき妹アリス。荒野を旅する二人の少女が一人の青年に出会ったところから物語は動き始めます。
しかし、さすがあさりよしとおといいますか。昨今の美少女ブーム(って昨今か?)をいかんなく取り入れ、あさりよしとおらしく調理。その手口、いやいや手腕はまさに円熟の粋に達しているかと思われます。この話を読みはじめて、ピンときたのは『ただいま寄生中』でした。『ただいま寄生中』も実にいい作品でしてね、当時流行の戦う美少女という要素をいかんなく取り入れ、あさりよしとおらしく調理。その切れ味はなかなかのものでありました。しかし、広く知られることなく埋もれてしまって、私はあさりの、そして『ただいま寄生中』の大いなるファンでありますから、その埋もれているということが残念でなりません。
『荒野の蒸気娘』は実にあさりよしとおらしい、まさに円熟といいましたが、実はこれはちょっとリップサービスが入っていまして、私は氏の実力はまだまだこんなものではないと思っています。とりあえず読んでみて、あさりよしとおらしいなあとおかしくなって、けれどどこか煮え切らなさも残って、あさりよしとおならもっともっと面白くできるはずだと感じたんですよ。少なくとも一巻の時点では、この漫画が持てる可能性を発揮できているとは言い難い。なんですが、巻末に進むに従って、だんだんと筆がのってきたとでもいいましょうか、うまく転がりはじめたような風なんですね。
きっと二巻はもっと面白いと思います。この、美少女ロボット姉妹が繰り広げる、愛と感動のハートフルストーリー。すべての人にお勧めです。見てください!
- あさりよしとお『荒野の蒸気娘』第1巻 (GUM COMICS) 東京:ワニブックス,2006年。
- 以下続刊
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