2005年4月14日木曜日

モーニン!

 集英社の女性向け漫画誌You。明日発売の2005年5月1日号をもって、『モーニン!』が最終回を迎えました。『モーニン!』というのは葬儀屋を舞台として繰り広げられる女の子の成長物語で、実は私、この漫画が始まったとき、なんていやな漫画だろうと思ったのでした。あからさまに駄目な子として描かれた主人公戎富久子の造形もいやなら、やたらもの分かりよすぎるストーリーの展開、そして浅さ。人の死という、ある種センセーショナルな題材を扱って、それをしっかりと受け止める力のない漫画でした。予想されたとおりに物語が進行していく。頭っから終わりまで鉄の規律に縛られて身動きとれないような、硬直した漫画でした。

けれど、それでも読んでいるうちに、私はこの漫画を嫌いじゃなくなっていったのですね。

私に嫌悪感を引き起こさせた要素というのは、最終回にいたるまで消えることなくつきまとっていて、結局それは漫画としての読ませる力の欠如であったと思うのです。実は、こうした求心力のなさは今のYou全体から感じられて、ええ、確かに次回を楽しみにさせるような漫画もあるにはあるのですが、それ以上に読むのやめようかなと思わせる漫画のほうが多いです。私の好みが変わった、あるいは今Youが捉えたいと思っている読者層から私がはずれたというだけの話であるとは思いますが、その、もう自分にはYouは駄目かもと思わせた漫画のうちにこの漫画は含まれていたのでした。

けれど、連載の途中からこの漫画に向ける私の目は明らかに変化してきて、読み飛ばすには惜しい漫画だと思うようになっていたんですね。それは多分、当初あまりにも甘すぎた富久子が、甘すぎた漫画の雰囲気が、だんだんと考えて自ら動こうとするかに変わったためであったと思います。

浅いには浅いなりに、それでもだんだんと複雑さを持ってきて、例えそれがありきたりの、読み終える前に既に結末の用意されてしまっているようなものであったとしても、そうした固さと漫画自体の持っている腰の弱さとが面白くバランスをとって、私には嫌いになれない漫画になりました —

私の、この漫画に対する好悪の移り変わりは、結局は最終話のテーマに同じであったのだと思います。この漫画の甘さというのは、ハートフルであることにつきます。べたべたのハートフルで始まった漫画は、結局そのハートフルをどこかに残したまま、ハートフルだけでは駄目なのだと説明して終わった。その矛盾した危うさが、私の心に触れたのだろうと思っています。

ええ、一般の人には読んでみたらと勧められても、漫画読みには決して勧められない漫画で、けれど私にはどこかほっとさせて、どこか嫌いになれないという、微妙な温度を感じさせるという、不思議な漫画になりました。このことだけでも、今までYouを講読してきた意味はあったと思います。

  • 川富士立夏,黒沢明世『モーニン!』(クイーンズコミックス) 東京:集英社,2004年。
  • 以下続刊

蛇足:

富久子は音大卒という設定です。音大出の甘いお子ちゃまが葬儀の現場で揉まれるうちに成長する。第一話を読んで、ああ、ありきたりな話、と思いながらも、実はそんな富久子の駄目さ加減は意外にリアルであるかもなあと思ったりもしたのでした。

もちろん、音大出ててもしっかりしてばりばりと仕事をこなすような人もいますよ。でも、連載開始当初の富久子みたいなのも、間違いなくいます。ええ、間違いなくいます。

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