SHINOすけさんが、分類に関してお困りだ! というわけで、今日は『日本十進分類法』をご紹介しようかと思います。『日本十進分類法』というのはなにかといいますと、日本における図書館の現場で、最も広く用いられている図書の分類ツールです。NDCと略されるので、こちらで覚えているという人もいらっしゃるかも知れませんね。
『日本十進分類法』はその名が表すように、十進法の数字表記で図書の分類をしようというものです。例えば私の専門だった音楽でいえば芸術がまず700、そしてその芸術のカテゴリー内に音楽は760という数字を割り振られていまして、さらにこの中に、総記だったら末尾を0、理論だったら1、地理歴史は2というように、どんどん細分をしていきます。
『日本十進分類法』の便利なところはなにかといいますと、日本の図書館の多くがこのツールにしたがって図書の分類をしているから、一度この分類を覚えてしまえば、図書館に行って本を探すのが大変便利になるんですね。京都の図書館で音楽史が762なら、東京でも北海道でも九州でも、やっぱり762の分類を見れば音楽史の本が集められているわけです。分類法や目録規則といった基本的ツールを共有化することで得られるメリットというのは、まさにその、どこにいっても同じやり方が通用するということでありましょう。
じゃあ、『日本十進分類法』があればそれで万全かというと、そうではないのが非常につらいところでして、なぜかといいますと、『日本十進分類法』が提供するのはあくまで分類の区分だけでありまして、実際の分類に関しては図書館の整理係の判断にかかってくるからなんですね。
例えば、『ベートーヴェン32のソナタと演奏家たち』という本があったとして、これをどういう風に分類してみましょうか。
タイトルにベートーヴェンとあるから、ベートーヴェンに分類してしまえばいいんだ、となれば、ベートーヴェン論なんかが収められる762.34という番号を与えてやればいいでしょう。ちなみにこれ、ドイツの音楽という区分です。
ところで、この本、ベートーヴェンの32のピアノソナタを扱う本みたいですね。じゃあピアノに分類すべきなんじゃないかなと思ったりもする。この場合、与えられる数字は763.2です。
いや、私は「演奏家たち」というフレーズが気になるという人もいるかも知れませんね。実際この本は、色々なピアニストがどういうベートーヴェン解釈をしているかという本ですから、じゃあ演奏家列伝でもあるのじゃないかな。そうなると762.8になるのかなあ。いや、けどこれは違うような気がする。
とまあ、こんな風に分類というのはどうにでもなりそうなもんであるのですよ。だからこそ、分類する人間のセンスや見識が問われるわけで、さらにいえば、分類する人間の良し悪しが、その図書館の質を左右するともいえます。
けれど、現実問題として分類というのは難しいんです。私が『ベートーヴェン32のソナタと演奏家たち』を分類するとしたら、主分類を763.2にして、副分類を762.34にするような気がします。いや、私が以前いた図書館の基準(つまり過去の分類係の仕事の積み重ね)を思い出してみれば、主が762.34、副に763.2をあてるほうがいいのかな。と、やっぱり迷います。
例に出した本はまだわかりやすいほうなんですが、世の中には本当にどう分類したものか考えても考えてもわからんというのもありまして、さらに悪いことに、『日本十進分類法』には用意されていないような分類もあって、つまりジャンルやカテゴリーというのは、常に新しいなにかが出現するたびに拡大発展していくものでありますからね。時代の最先端みたいなものは、どこにいれたらいいかわからないものも出て来るんです。
とまあ、こんな風にジャンルわけ、カテゴリーわけというのは難しくって、突き詰めていけば身動きとれなくなってしまいます。だから、ええいっ、私はこれは762.34に含めるべきだと思う。他の誰がなんといおうと知らんっ、というような割り切りが必要になるんですね。
- もりきよし原編『日本十進分類法』東京:日本図書館協会,1929年;新訂9版,1995年。
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