『まんがタイムきららフォワード』2012年7月号、発売されました。表紙は『がっこうぐらし!』、新連載作ですね。廃墟のように壊れた学校、教室の中、女の子が三人いるという表紙。帽子のはしがぴんと立ってネコミミみたいになってる青いセーラー服の女の子。あとふたりは、緑色のセーラー服。ツインテールの女の子と、そしてロングヘア、脇に軽くまとめてますね、ちょっとおとなびた女の子です。晴れた空、その明るさが廃墟にさして、不思議とおだやかなイラストになっています。
ということで、『がっこうぐらし!』、新連載です。授業中に居眠りしていたヒロインゆき、丈槍ゆき。ネコミミっぽい帽子の女の子ですね。学校をエンジョイしている彼女。なにもかもが嬉しくて、楽しくて、そして部活、学園生活部にいけば友達もいて、なお楽しいというんですね。部員はシャベルを愛するツインテール、くるみ。部長はちょっとお姉さん? りーさん。この三人に佐倉先生、めぐねえって呼ばれてますね、が加わってメインは全員なんでしょうか。いやあ、やられましたよ。これ、普通の学園ものかと思わせて、全然違ったっていうんですね。教室、クラスメイトとおしゃべりしながら自分の席に向かうゆき、しかしページをめくれば、これはいったいどういうことなのか。ぼろぼろになった教室。そこには誰もおらず、しかしゆきはあたかもそこに誰かがいるかのように話し続けている。およそ普通ではない光景。校庭には大量の瓦礫と、あちこちに死体と思しい人影がいくつもあって、これは爆撃? それも核かなにか? どういう状況なのか、すべてはゆきの見ている幻なのか。衝撃を与えて閉じられた第1話。これは気にしないという方が難しい、そんな出だしでした。
『夢喰いメリー』、倒れたメリーのその理由。ああ、器なしで現にいられるメリー、彼女の「庭」について。なるほど、彼女の「庭」である「界境の門」、それを破壊することがエルクレスの目的だったっていうのか。夢魔と庭はどちらかが欠けても存在できなくなる。ということは、門が完全に破壊されたら — 。勇魚が心配するメリーのこと。エルクレスの目的が達成されるということは、ただ夢魔が現に器なしで顕現できるようになるというだけでなく、メリーの存在自体が危ぶまれる、ということなのかあ。ここにきて、いよいよさらに増す危機感。この次へ次へと追い詰められている感覚を高めていく見せ方、畳み掛けてきて、ほんと、ひりひりさせられますね。だからなのかな、メリーの夢路に向けた言葉、アタシがアンタともう一回遊びたかったんだよ
、これは響きました。メリーの本当の気持ちがここにあるのか。夢路を大切に思っている、あるいは、すでに別れを意識している、いろいろ感じられて、ああ、このしあわせだった彼らの時間、それがこの一コマに畳み込まれているようだ。楽しかった、面白かった、そう思ってきた、これまでの感情がすべて愛おしさに変わる、そんな瞬間だったと思います。
『はじおつ。』。家に帰りついた向日葵が、自分の手を見て頬を赤らめる。甲斐くんと手が触れたから、それを思い出して? と思ったら、手を砕こうとしたからっていうのんか! いやいや、そりゃないでしょうよ。と、こんな変なこと考えてるお嬢さん。これだけの恐怖ないしは不安があったからこそ、あのラストのコマ、あの向日葵のモノローグ、あんなにも効いたんでしょう。いや、ほんと、よかったです。嫌われたんじゃないかと心配する甲斐くんに、手をつなぐことが嫌かどうか、自分の気持ちを確かる向日葵。ふたりの、不安や怖れがありながらも、手をつないで、自分の気持ちを知って、あの互いに慈しみあうような時間に繋がっていく、これは読ませました。実に丁寧で濃密、大変よかったです。
『はぢがーる』は、新しい課題が提示されて、それは男の子にキスをするというもの。えええーっ、これは驚いた。だって、これが最後の課題だと思っていたんだもの。いや、そう思うだろうと見越してここでこれか。ということは、最後はその先にすすm、じゃないな。ここでキスなら、最後は告白だろう。あるいはそれに近いなにか。紗江の気持ち、それを明確にさせる、そうしたものになるんじゃないかなあ。なんて予想は野暮ですね、本編ですよ、本編。やっぱりこの人、面白いです。なんかどっかずれていて、課題クリアのための脳内シミュレーションの果てに気付く、本田くんには彼女は、すなわち恋人はあるのだろうか。真木が紗江に彼女さんですかと聞いた、その理由を、本田くんに彼女がいると知っていた、それが誰かは知らなかった、なので紗江のことを彼女かどうか確認した? って確かに説得力ある推論だけど、違うよ? 違うと思うよ? そして、もし本田くんに彼女がいたなら、これまでやってきたことはすべて彼女さんへの背徳行為になってしまう、って、それ女子高生の語彙じゃないよ! 変な汗って、土下座って、いや、もう、めちゃくちゃ面白かったです。で、今回のラスト、あの展開。いや、もう、素晴しかった。面白かった。けど、ただ面白おかしいだけじゃない。紗江の、自分でも気付いてない気持ち、それが見事にあふれて、いやもう実によかったです。
- 『まんがタイムきららフォワード』第6巻第7号(2012年7月号)
引用
- 牛木義隆「夢喰いメリー」,『まんがタイムきららフォワード』第6巻第7号(2012年7月号),57頁。
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