2008年12月18日木曜日

PRAHA

 このところ、私はいつになく岩崎宏美に夢中。テレビで聴いた『聖母たちのララバイ』によほど感じるところがあったのでしょう。昔の、フレッシュながらもまだ若干のかたさを感じさせるものではなく、今の、年月を経て円熟した岩崎宏美の歌唱。その魅力にすっかり酔ってしまって、最近の歌唱を収めたアルバムも手元に置きたい、そのように思ったのですね。そうしたら、ちょうどいいタイミングとでもいうべきでしょうか、一年ほど前に自身の持ち歌を録音したアルバムを出していらっしゃったんですね。それがPRAHA。アルバムタイトルは、レコーディングをした土地、チェコのプラハに由来する、ドヴォルザークホールにてチェコ・フィルハーモニーをバックに収録された、ちょっとリッチなアルバムであります。

私はこのアルバムの存在を、それこそ、このあいだの『聖母』について書こうとした時にはじめて知って、それはDear Friends IVについての記事冒頭にてもいいましたとおりです。曲名でちょっと検索してみたら、出るは出るは、アルバムからベスト盤からオムニバス、それはもう多種多様というほかない様相を見せて、想像していたとはいえ、それを上回る状況でありました。その結果は、すなわち『聖母たちのララバイ』がどれほどに人気のある曲であるかを如実に物語って、一種ひとつの時代を代表しうる、それほどの曲であるのだといわんばかりでありました。

その結果に、PRAHAも現れてきたのですね。新しいアルバム、新録音、バックはチェコ・フィル、なんだかこれはすごそうだな。それに限定版もあるらしい。限定版にはDVDが付いてきて、収録されているのは『聖母たちのララバイ』のビデオクリップと、プラハ滞在中のドキュメンタリー、そしてフォトギャラリーだそうな。正直、DVDはなくてもいいかなとも思ったけど、そうはいっても付いてくるなら欲しい、それが私という人間です。なくなる前に買わなくちゃ! という次第で買った。慌てて買った。そして聴いて、DVDを見て、買ってよかった。これを聴けて、見られてよかったと思ったのでした。

 映像はドキュメンタリーに見る岩崎宏美は、これは、と思うほどの魅力をたたえて、なんて素敵な女性なんだろうと思いました。昔の、少しかたさを感じさせる、そんな岩崎宏美も好きなのですが、しかし今の方がより美しいというか、魅力的というか、穏かに落ち着きを見せる、そうした成熟と、時にはしゃいで見せるような茶目っ気、少女のような愛らしさが同居しているのですね。それは、岩崎宏美というひとりの女性が歩んできた年月、その時代時代の美、魅力なるものが層をなして重なり合っているがようです。

そして、それは歌においても同様なのかも知れません。美しい歌声、優れた技術、そうしたものを支えとして成立する歌が素晴しいのはあたりまえだ、そう確かにあたりまえだと思います。ですが、それだけではないのです。ただうまいだけではない。そこには、岩崎宏美という人のこれまでに重ねてきた時間が濃密であります。その曲を歌ってきたという歴史がある。その上に、この人の生活、経験が加わることで、テクニック云々ではすまされない妙味が香るのですね。時に軽く、時に艶然と歌われるその様は、少女のころを思わせる可憐さ、華やぎを刹那感じさせたかと思えば、深みをもって心に訴えかけ、ついにはさらっていく。しなやかにして豊かな魅惑の世界がひらくのですね。

それがもう素敵で素敵で、もうどうしようもないほどで、私はもう毎日毎夜Dear Friends IVPRAHAと聴いて、めろめろであります。もし今、日本で一番素敵な女性は誰だと思うって問われることがあったなら、ああ、それは岩崎さんだよ、って答えるね。いや、日本じゃなくて、世界でもいい。とにかくそれくらいに素敵。本当に素敵なのであります。

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