先日、書店に買い出しにいったら、新刊の棚に思いがけない祥人の新作を見付けて、当然のごとく買うのです。タイトルは『ユッカ』。表紙のイラストを見れば、この夏に最終巻の出た『日がな半日ゲーム部暮らし』に出ていたキャラクター、雪華の面影が見てとれて、もしかしたら『日がな半日』のスピンオフかなにかなのかなと、そんな期待もちょっとあって、読むのがすごく楽しみであったのでした。そして、読んでみて、違った。残念! 残念というのは、それだけ『日がな半日』が好きだったってことなんですが、あの漫画の、どこか優しげな雰囲気、本当に好きだったんですよね。みんな前むきで、いい子ばかりなんだけれど、どこかに危うげなところを隠していて、それが不思議といじらしかった、そしてそれがなおさら愛おしくさせたと、そんな風に思っています。
そして、新作『ユッカ』。読んでみて、ヒロインユッカが雪華に似ているというのは、実際のところそのとおり、雪華をモデル、下敷きとしたキャラクターであったのだそうです。でも、それは最初だけ。次第にユッカは雪華とは違っていって、独特のキャラクターとして振る舞うようになっていった。そのあたりは、作者ならずも、おぼろげながら感じるところがあって、確かに面影こそはあれど、違う人なのだ。そう思わせるところ、大いにあったのでした。
しかし、この漫画の印象は『日がな半日』とは随分違っていて、なにが一番違うかというと、おっさん色がかなり強めなんですね。登場人物は、ゲームのために仕事をやめたというお父さん、早良博明。まずその設定からして駄目な大人って感じですが、ここに負けず劣らず駄目な匂いをさせる甥っこ、大学生の春告君が加わって、このふたりがふたりして、コアなゲームトークを繰り広げるものだから、もうおかしくて。お父さんにはあずねちゃんという小学生の娘さんがあるのですが、よくわからないことをいっているこの大人ふたりに対して、不審がるというか、心配しているというか、そういう様がなおさらおかしさを醸し出しているように思うんですね。
以上の三人が、この漫画の基本となる登場人物。そこに突然やってきたのが、タイトル・ロールであるユッカ・クマゴマでした。謎の美女の登場、しかし謎をはらみながらも、ネタはゲームに落ちていって、やっぱりこのあたりはゲーム四コマであるという所以でしょう。しかし、謎が謎を呼ぶ展開はとどまるところを知らず、ふたり目の謎の美女、屋形原京子が現われたかと思えば、早良家に入り浸ってゲーム三昧。なんなんだろうなあと、苦笑しながら面白がっていたら、だんだんにそんな笑いごとではすまされなさそうな、シリアスっぽい展開がじわじわ日常ゲーム四コマを侵食していって、うわあ、これ、なんか、事前に想像していた以上にすごそうだぞ。もっと、お気楽なノリで進行するものだとばかり思ってた。それが、こうくるか!
作者、コメントにて曰く、連載は30話近くまで回を重ねているのだそうですが、この第1巻に収録されているのは、第8話まで。つまり、後二三冊くらいは軽く出せるほどの分量が控えているってことですよ。それを知ったら、もう早く先を読みたくなって仕方がなくなって、いや、本当に、早く出てくれないものかなあって思っています。けど、同じく作者曰く、そんなに話が動いているわけでもないようだから、そんなにがつがつして先を心待ちにすることはないのかも知れません。とはいってもなあ。やっぱり先が気になる、その気持ちを押さえるのはちょっと難しそうでありますよ。
- 祥人『ユッカ』(電撃コミックス) 東京:メディアワークス,2008年。
- 以下続刊(きっと)
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