ひらのあゆといえば、『ラディカル・ホスピタル』で知られた人で、他にも『ルリカ発進』とか『迷宮書架』で知られた人で、って、おおい、『迷宮書架』はもう手に入らないのかあ。名作だというのに、あの、本を楽しむ人にはたまらなく面白い漫画なのに、入手困難になっているというのはもったいないことです。
私がひらのあゆを知ったときには、すでに『星のズンダコタ』は入手困難になっていました。確か、大阪旭屋書店のコミックフロアで、二巻だけはなんとか買えたんですよ。けど、一巻はもう注文出しても通らない状態。ジュンク堂に泣きついても駄目で、しかたがないからネットで探して中古で押さえました。
その非常に入手困難だった『星のズンダコタ』が復刊されました! ああ、嬉しい。これで、ズンダコタ文明を知ろうとしてかなわなかった夢の探し手たちもうかばれることでありましょう。
クールな態度、しかし胸には情熱を秘めた考古学者、香神壮一郎が我らの主人公。行方の知れない森本博士を探しだし、そして彼はあの幻のズンダコタ文明にたどりつくことができるのでありましょうか! というのが、漫画のあらすじ、というか基本設定といったほうがいいのかな? こうした状況の中、一癖も二癖もある人物に右往左往して、時には迷い、時には奮起奮闘する香神を愛でようという漫画です。
基本的にはどたばたのコメディ。一見すれば自分勝手で迷惑そのものだけど、本質的にはチャーミングで仲間思いの登場人物がわんさと出てきて、その関係というのがすごく魅力的だもんだから、私はうらやましい。みんながみんな変わり者であることを自覚していて、だからお互いを許し合えるというか、認めあえるというか。ある種、おたく的理想の関係が成立しているのだといっていいんじゃないかと思います。
この、表面的にはぐだぐだなんだけど、基本線はびしっと通っている人間関係を描かせたら、ひらのあゆはうまいなあと思うんです。『ラディカル・ホスピタル』もそうだし『ルリカ発進』もそうだったし、で、その人間関係が暖かいのは本当に素晴らしいことだと思います。お互いを尊重しあい、慈しみあえる。けれどそれは私を犠牲にするとか、そういうのとは全然違っていて、個が立って、非常に自由で自然な状態なのです。
だから、私はひらのあゆの漫画が好き。『星のズンダコタ』は、普通の漫画読みには勧めたくない漫画ですが、私がこれぞと思う人なら、面白いよー、と勧めたい。とっておきの漫画であります。
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