Chanson pour l'Auvergnat、『オーベルニュの人にささげる歌』は私の好きなシャンソンのひとつで、今、突然なにか歌ってくれといわれて、空で通しで歌えるシャンソンといったら多分これだけでしょう。出会いは例によって例のごとく、NHKの語学講座で、この歌を作ったのはジョルジュ・ブラッサンス。シャンソンを語るうえでは欠かすことのできない名前であると思います。
とはいっても、私が生まれたのはそもそも日本におけるシャンソンブームが過ぎ去った後で、テレビでそうした残照を見たことは幾度かあれど、けれどやっぱり私はシャンソンに関しては浅いのです。昔、図書館で働いていたこともあって、シャンソン関連の本も何冊か借りて読んで、けれどそれでも深く分け入ることはできず。私におけるシャンソンは表層的に過ぎるなと、そのように思っています。
私が、昼、職場の駐車場の片隅でこの歌を歌っていたとき、シャンソンも歌うんだねとおばさんが話しかけてくれたのを思い出します。日本におけるシャンソンのブームは越路吹雪がおそらく牽引役で、けれど越路吹雪が『オーベルニュの人にささげる歌』を歌っていたとはついぞ聞きません。あるいは、他の誰にしてもこの歌を歌っていたかは知らなくて、一時私のサイトを見てくれたフランス人に頼まれて調べたことがあったのですが、日本でこの歌が歌われていたという形跡を見つけることはできませんでした(誰かご存知なら教えてください)。
だもんだから、あの時の言葉は嬉しかったです。知っていてくれたことが嬉しかった。
『オーベルニュの人にささげる歌』は、苦境にあったときに手を差し伸べてくれた人が仕合せになってくれればよいと願う歌で(もっとはっきりいえば、あなたがもし死んだら天国に行けますようにという祈りです)、私にはこの歌の主人公が善良なるマイノリティの代表のように思えてなりません。
私は、善良であるかどうかは自信がありませんが、自分自身が少数派であることを自覚しているから、この歌の主人公が他人事のようには思えなくて、だからもし私が彼に会ったときには、きっと手を指し伸ばせればよいなと、そのように思います。また、私が苦境にあったときに助けてくれた人を思いだしては、あの人たちの仕合せを、魂の仕合せを祈りたいなと思います。
Georges Brassens
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